見出し画像

特化したハードウェアのパワー:船舶のエンジンからAIチップまで

 本稿では前回の富岳で和製生成AIを作るアプローチは、かなり『無理ゲー』であり、日本政府のAI政策が如何になっていないかということについて、解かり易く説明してみます。 

  本稿で取り上げるエンジニアリングとは、特定の目的に応じた問題解決の技術の総称であり、これはエンジンの開発からCPUやGPU、AIチップまで共通しています。実際に、我々が日常で利用している数々のエンジンやチップは、各々特定の目的を達成するために開発されています。
 
 まず、自動車のエンジンを考えてみましょう。自家用車のエンジンは、効率的な燃料消費と優れた加速性能を両立することを目指しています。例えば、乗用車のハイブリッドエンジンは、都市部での短距離走行において電気モーターを使用し、長距離や高速道路ではガソリンエンジンを使用することで、燃費効率とパフォーマンスを最適化しています。
 
 一方、大型トラックのエンジンは、長距離のヘビーデューティな運搬を可能にすることが重視されます。そのため、大排気量かつ高トルクのディーゼルエンジンが一般的に採用されています。また、コンテナ船のエンジンは、数千トン~数十万トン単位の貨物を長距離運搬するため、さらに大きな出力と耐久性が求められます。コンテナ船は3,000TEUまでが小型とされ、14,501TEU以上を超大型とします。TEUは『Twenty-foot Equivalent Unit』の略で、20フィートコンテナの基準量を意味します。TEU自体に重量は固定されておらず、実際のコンテナの重量は国や積み荷によって異なりますが、大体24~28トンとされることが多いです。ちなみに、エンジンはこれらの運搬目的に応じて、適切な形状、材料、技術が採用され、その結果として全く異なる設計と性能を持つようになっています。
 
 これと同様にコンピュータの世界でも、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、AIチップなど、特定の目的に最適化されたハードウェアが開発されています。
 
 CPUはコンピュータの『脳』であり、基本的な計算処理やシステムの制御を担当しています。一般的なアプリケーションの実行、オペレーティングシステムの運用、データベースの処理など、さまざまなタスクを効率的に処理できるように設計されています。
 
 一方、GPUはグラフィックスの描画という特定の目的に特化したプロセッサです。3Dゲームや映像編集ソフト、CAD(Computer Aided Design)など、大量の計算を必要とするグラフィック処理に優れた性能を発揮します。GPUは、多数のコアを持つ並列処理アーキテクチャを採用しており、それぞれのコアが同時に異なる計算を行うことができます。これにより、一度に大量の画像データを高速に処理することが可能となっています。
 
 さらに近年注目を集めているのが、AI専用のチップです。これらは、ディープラーニングと呼ばれるAIの一種が必要とする大量の行列演算を高速に行うことを目指して開発されています。GoogleのTPU(Tensor Processing Unit)やNVIDIAのTensor Coreなどがその例で、これらはディープラーニングのアルゴリズムに特化した設計を採用しており、一般的なCPUやGPUよりも効率的にAI計算を行うことが可能です。
 
 ここで挙げた例からもわかるように、エンジンやプロセッサは、それぞれの目的に応じて異なる設計や技術が採用され、その結果として特定の性能や機能を発揮します。これらの違いを理解することは、その製品や技術がどのような目的を果たすべきか、どのような場面で最大のパフォーマンスを発揮するのかを理解するために重要です。これはエンジニアリングの基本的な思考であり、船舶から自家用車、CPUからAIチップまで、私たちが利用している全ての技術に共通する視点と言えるでしょう。
 
 このような背景が解ると、以下のような取組みが『今さらやっているのやら…』という感じだということがお分かりいただけると思います。 


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?