『さめざめ』のために

『さめざめ』は、横顔の映画である。
けっして人物の表情がすべて横顔でとらえられるわけではないが、うつしだされているものは横顔にほかならない。

わたしたちは、だれかの横顔しか見ることができないという真実を、この映画は記録する。

横顔は推移し、変幻する。
あるときは無機質に、あるときはファニーに、あるときシリアスに、あるとき艶っぽく。
しかし、横顔の向こう側には、つねに見えないなにかが横たわっている。
星崎久美子監督は、それをとてもいとしいものとして指先にのせ、わたしたちに差し出している。

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