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孤立の安堵、自立の不屈。OMSB『ALONE LIVE』

OMSB
『ALONE LIVE』

 サードアルバム『ALONE』発売直後、2022年6月に行われたワンマンライブの模様を収録。稀代のラッパー、OMSBの質量漲るパフォーマンス全23曲は、人間が響かせる声に没入する歓びが横溢する。

 OMSBのラップには覇気があるが、マッチョな勇ましさではなく、後ろ向きに駆け上がる情緒がある。たびたび自己承認欲求を反省するリリックはけれども自虐の陶酔に閉じることなく、魂の解放に向かっている。自信と弱腰が共にある情の緩急は、観客に気負わぬ感謝を投げかける人間味あふれるMCが添えられることで、孤立の安堵、自立の不屈が際立つ。

 整理できない精神に正直であり続けるOMSBの楽曲には、現代ならではの誠実がある。自身の半生をネガポジ併せ呑む複眼的な回顧録「大衆」には、威勢の良い悲哀が宿ると同時に、己を直視する技術の確かさが共存。生き生きとした記述があれよあれよという間に辿り着く世界の輪郭には、心の温もりがある。

 鼓舞と叱咤を等価の重さでぶちかます名曲「Think  Good」は、現状を跳ね返す意欲と、不満を心意気で乗り越えようとする伸びやかさに満ち、社会に呪詛を撒き散らかす不毛を蹴散らし、自身と対峙する不断の営みで打ちのめす。

 反体制のカテゴリで叫ぶのではなく、人生を噛み砕き飲み干す一人称を信じきること。その、明るい太々しさには誇示は微塵も漂わず、淡々と日々の営みが記録される呼吸がある。

 息を吸って吐く。鼓動が巡る生命の単純なありようを、OMSBはヒップホップで表現している。

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