行定勲『ピンクとグレー』と『真夜中の五分前』の関係

ピンクとグレー

幕開けから62分の衝撃!! “世界が変わる仕掛け”に、あなたは心奪われるーー
そんな惹句が躍っている。煽り、ではない。そのことばに嘘はない。その仕掛けはたしかに衝撃を呼ぶし、同時に心奪われるだろう。その興味だけで観に行ったとしてもきっと満足するはずだ。
だが、行定勲監督の映画を観てきた者であれば、前作『真夜中の五分前』を参照すれば、より一層深みを増す。乱暴な言い方をすれば、『真夜中の五分前』が総論だとすれば、『ピンクとグレー』は各論。さらに一歩進んだ進化形としての「映画的構造」がここにはある。
振り返ってみよう。『真夜中の五分前』は、対照的な性格の美人双子姉妹に翻弄される時計職人の物語だった。そこでは「時間」と「空間」の亀裂が描かれた。この「時間」は、あるいはこの「空間」は、姉が作り出したものか、妹が作り出したものか、判別つかなくなる主人公がそこにいた。彼と双子の関係は、言ってみれば「二等辺三角形」と言ってよいが、『ピンクとグレー』は大胆不敵な二部構成によって、「ふたつの三角形」を交錯させている。スター俳優の死が呼び込む、プレーンな「三角形」と、さかさまの「三角形」の交錯が「ダイヤ」のかたちを作り出す。その深遠さ。タイトルにあらわれているように「はざま」の魅惑がそこにはある。

2016.2.16

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