おくすりでみるゆめ
眠れないと思ったのはいつからだろうか。
眠った夢がずっと現実じみているのはいつからだろうか。
僕はそんな疑問と共に今日も親指の腹に力を入れた。パチっと、人の気もしらない軽い音を耳に入ってくる。
僕は寝ている時に見る夢が好きだった。
現実ではない世界、創造の世界がそこにはあって、自分はそこで何にでもなれた。なんでもできた。たまに思ってる通りにいかない夢が来たら、あーこう出来たらよかったなぁと思うこともあったし、すごく怖い夢は本当に涙が止まらないこともあった。
それくらいリアルな世界が、現実の世界のとなりにあるのかと思うと、この現実も悪くないと思っていた。いや、たぶん愛おしいと感じていた。だから僕は寝ることが好きだった。
だけど、いつからか現実が干渉してくるようになった。夢の中でも現実世界の布団の中にいて、朝起きて現実を生きる。そこには以前見た夢とは違う世界。寝ても起きても同じ場所。 夢から覚めたはずなのに、驚く程疲れている身体。実は寝てなかったのかな、と思う程だ。
そして僕は混乱するようになった。これは夢の出来事だったのか、現実の出来事だったのか、
今は夢なのか、現実なのか。
「眠れる薬を出しましょう」そう言われて渡された薬を僕は口に入れて水を一気に飲み込んだ。そして布団に入り、天井を見つめる。少し経つと、頭がぼーっとしてきた。意識がなくなるということを何となく理解する。しかしその思考はどんどん曖昧になって、まぶたを落とせば現実からはログアウト。そしてすぐに夢にログインする。
よく眠れるようにはなったのかな。でもおくすりを飲んでから、夢の記憶は曖昧だ。
今、僕は一体どんな夢をみているのか。それがいい夢なら、いいなぁ。僕はそう願いながら、今日も思考を溶かして目を閉じる。
おやすみ、僕が生きる世界
バイバイ、僕の大好きな世界
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