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相棒2 第15話「雪原の殺意」感想

絶望と希望の北海道前後編

『相棒』は劇場版を除き都内での撮影が殆どで、実際に大型ロケをしたのはS2でのロンドンと今回の北海道、S8の京都、S11の香港くらいで、通常回の大型ロケはこれが最初で最後

【あらすじ】

繁華街で売春行為をしていた身元不明の沙雪を捕まえた亀山は、北海道への護送を命じられる。
沙雪は売春と売春斡旋の容疑で道警に起訴され、保釈中の身だった。札幌に到着した亀山は、道南署の美濃部北川の出迎えを受ける。
沙雪の母・みどりは沙雪が大学を中退し、ホストの加茂内に入れ込んでいたことを亀山に告白。
亀山は沙雪が加茂内に利用されたのではないかと疑う。
一方、東京では期日に戻ってこない亀山を美和子らが心配していた。
上司の責任だと警視長の内村に怒鳴られた右京は自費で北海道に行くはめに。

脚本:櫻井武晴
監督:和泉聖治

【ゲスト】

美濃部耕筰(演:河原さぶ さん)

今回の被害者
面倒を見ていた沙雪は更生せず、信頼していた部下には裏切られて殺されるっていう悲惨っぷり。
演者の河原さんは2014年以降活動が記載されていないので心配。

若杉栄一(演:マギーさん)

S2「消えた死体」から再登場!
ダメ人間過ぎて好印象を持っていなかったが、今回は北海道での頼れる味方として活躍。
地味に「右京さん」呼びをする3人目の人物
因みに彼以降で「右京さん」呼びを恒常的に行うのは冠城亘です。(単発なら米沢さんやカイト君も呼ぶけどね

本宮沙雪(演:前田愛さん)

後編にて紹介

沖真二(演:内田朝陽さん)

後編にて紹介

工藤伊佐夫(演:小野武彦さん)

後編にて紹介

【感想】

《二組の"相棒"》

北海道で売春と売春斡旋で起訴され逃亡していた沙雪を捕まえて護送する事になった亀山。
しかしホストの加茂内こそが売春斡旋の真犯人であり、亀山は加茂内を追い詰めていく。
しかし加茂内と組んでいた警察官の北川は自分に影響が出る事を恐れ、加茂内を殺害。
その後加茂内殺害を突き止めた"相棒"の美濃部も殺害し、目撃者でもある工藤も狙う。

北川がクズ過ぎる!!
加茂内と組んで甘い汁を吸う所まではただの不正で危険が迫ると
だけど長年の"相棒"である美濃部を逡巡なく殺害するのはクズ過ぎる!
しかも目撃者の工藤も殺そうとするし、捕まった後には沙雪に暴言を吐きまくるっていうクズっぷりが止まらない。

美濃部は頑固で"相棒"が定着せず北川が常に組むようになった。
想像するに美濃部は不器用だけど北川が自分と組み続けてくれた事が嬉しかったし、それで強く信頼を寄せていたんだと思う。
なので工藤の証言だけでは信じず、証拠のボールペンで疑惑が確信に変わったと推測。

でもスグに逮捕するんじゃなく、最後に飲んで話してから自首して欲しかったという人情…。
タバコは吸えないのに灰皿を用意していたり、お酒は飲めないのに自分の分も注ごうとしていたり優しさも垣間見える。 

でも北川からしたら美濃部は"深く立ち入ってこない便利な先輩"程度にしか思っていなかった。
だから美濃部を殺せた。
殺害後も"美濃部先輩"呼びをしていたり、拳銃を出す前は迷う表情をしているから本当は殺したくなかったとは思うが、結局自分の為に殺害を行う冷酷さ。
ここで美濃部を殺したから
「先輩を殺してまで保身に走ったんだから、目撃者も殺さなきゃいけない」とタガが外れてしまった。

でも沙雪の心を傷付ける罵倒を止められても続けたのは最悪
沙雪について詳細は後編で語るが、父親が死刑囚というコンプレックスで自身の過去を知られたくない…知らなかったからこそ悪人と分かっていても加茂内に溺れてしまった。
でも実は加茂内は沙雪の過去を知っていて、知らないフリをして利用していただけだった。
でもそれを沙雪に伝える必要は皆無

美濃部が沙雪達を気にかけていたのを知っているのに、何故傷付けようとするのかが分からない
沙雪は北川に不利益になる事は何もしてないのに酷すぎる…!!
沖が沙雪をケアしてくれたから良いものの精神的ダメージは半端じゃない。
そりゃリストカットしたくもなるよ…

ただ後編への繋ぎとはいえ単発事件として考えると結構適当。
シナリオとしては北川と美濃部の絆は想像にお任せします状態だし、事件としても北川は何故か亀山は殺さずに放置するし美濃部殺害後に手帳を見るくらいには冷静なのにビールやタバコを片付けないアホさがヤバい。

あと特命係はどうやって教会に辿り着いたんだ?
沙雪が北川の正体を知っていて狙われていたって話なら教会へ向かうのは理解できる。
でも別に北川は沙雪を殺すつもりはなくて、工藤を狙っていたら偶然沙雪に行き着いたって流れなので、特命係は教会へ迎えた理由が分からない。

亀山を殺さなかったのはまだ殺しが未経験で日和ったとも解釈できるが、それ以外については説明も擁護不可。

この話だけで考えるとちょっとダメかなと思います

その代わりに沙雪の心理描写に時間を割いているので、後編への期待は高まる。

個人的には美濃部と北川を考えるとカイト君を連想してしまう。

若い刑事の過ちを諌めようとする老刑事って構図になると、どうしても三代目コンビが浮かぶ。

カイトは北川と違い上司である右京を信頼していて、右京もカイトを信頼していた。
でもカイトは自分が右京に信頼されていると思う事が出来なかった。

[杉下右京]
直ちに君を疑うほど、君への信頼感が薄かったとでも思いますか?

相棒13「ダークナイト」より

視聴者がカイトに疑念を抱いても右京は最後までカイトが"ダークナイト"ではないと信じようとしていた。
それどころか、疑うという発想も無かった
この考えは美濃部が北川に寄せていた信頼に近い印象すらある。

カイトは北川とは違い右京を騙す事はしても攻撃する事は無かった。
正義に燃えすぎたカイト君と私欲で不正に手を染めた北川は根本が全く違うとはいえ、上司を裏切り逮捕された警察官という括りだと同じ

カイト君は反省し右京や家族との再会を夢見て生きているが、北川は美濃部をどう思っていたのか分からないのが悔やまれる。

《今回のMVP》

亀山薫

沙雪の売春を食い止め、北海道という日頃とは違う土地にもかかわらず加茂内が売春の元締めをしている事を足を使い捜査を行ない証言者を見つける事に最高。
それで襲われてしまうも、その結果右京を召喚する事にも成功。

これは間違いなくMVP。
襲われさえしなければ、1人で加茂内を逮捕できていた。

また沙雪の為に頑張る理由で、浅倉が言及されるのも良い
大事な人が死刑になったという共通点
親が死刑囚という自分以上に厳しい境遇…しかも浅倉とは違い刑の執行で死んでいる複雑な感情。
そんな思いを小学生から抱え続けた女子大生を助けたいと思うのが亀山君の良さ。
浅倉と本宮恒夫、自分と沙雪を重ねながら一生懸命な亀山君は素敵です

次点は亀山に証言してくれた風俗嬢
ヤクザに脅されたり亀山に急に訪問されたりと不運に見舞われながらも、利益も無いのに証言してくれる優しさ。
というか沙雪がここで収監されてたら後編にも繋がらないので前後編合わせたらMVPになってた可能性すらある。

沙雪を支えた沖君も本来ならMVP候補なんだけどね…

【小ネタ&雑感】

•人混みで売春の料金渡しするな
•オッサン金だけ取られてマジで可哀想
•護送って新幹線や飛行機で行かないの?
•何で亀山は沙雪母と食事行ってるんだ
•大学へ勝手に行かなくなるってヤバい
•カニよりも北海道だとラーメン食べたい
内村&中園「旅費は出ない!」
•言われる前に通話明細書を準備しているホテルマンが有能
•デリヘル"男はつらいぜ"
•タクシー業界用語で酔っ払いは"お荷物"
•美和子に説明してあげろ右京さんw
•美和子の死刑パンチ可愛い
•沖君が沙雪を乗せて帰ったのでお母さんが帰れなくなった件
•2度目の被弾を避けた右京さん(なお劇場版ⅣとS18「ブラックアウト」で被弾する模様
•作中で名前が分かった瞬間にエンドロールで工藤と演者の名前が出るのが最高過ぎる

【次回】

相棒season2 第16話「白い罠」感想

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