【短編小説】徒労の人 ~なぜ書くのか~ 第1話
第1話
窓の外は、とめどなく雪が降り続けている。
真っ黒な空には、雪雲がどこにあるのかさえわからず、いつ止むとも知れない。
雪は音を吸収する。ペンションの中は奇妙に静まり返っていた。部屋に集まった数人の男女が、時おり息を呑む音さえも伝わってくる。
「……やっぱりわたし、行ってきます」
沈黙を破ったのはオーナーの妻だった。全員の視線を受けた彼女は一瞬だけためらうと、
「この雪でも、なんとか麓に辿り着くことはできると思うんです。そうしたら、助けを呼ぶことも