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【短編小説】徒労の人 ~なぜ書くのか~(全9話)+あとがき

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「犯人はあなただ!」「さあ、聖杯を取り出せ」「紫式部になりたい!」限界まで潜ったその先にある、指先に触れたものをつかみ取れ。あなたは書くために生まれてきたのだから。
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【短編小説】徒労の人 ~なぜ書くのか~ 第7話

   第7話 「ほら、なにぼんやりしてんだい」  鋭い声に、一瞬にして夢想が弾けた。手にしていた算盤が銭桝にぶつかり、音を立てる。  帳場格子の向こう側に、額に汗をにじませた母の姿があった。その横には、小上がりに置かれた背負子が見える。  母が戻ったことにちっとも気づかなかった。慌てて駆け寄り、小上がりに腰かけて手のひらで顔を扇いでいる母の横で、背負子から次々と本を出していく。 「お母ちゃん、これどうだった」  腕に抱えていた中から、一冊を手にして母に向けた。あねさんか