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【短編小説】徒労の人 ~なぜ書くのか~(全9話)+あとがき

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「犯人はあなただ!」「さあ、聖杯を取り出せ」「紫式部になりたい!」限界まで潜ったその先にある、指先に触れたものをつかみ取れ。あなたは書くために生まれてきたのだから。
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#創造と破壊

【短編小説】徒労の人 ~なぜ書くのか~ 第6話

   第6話  最寄りの駅で電車を下りる。改札を出たところで外を見ると、細かい雨がぱらぱらと降り出していた。鞄から折りたたみ傘を出し、夜の歩道を歩き出す。  雨足はどんどん強くなっていく。どんなに水溜りに気をつけても、パンツの裾が濡れていくのがわかった。時おり足首に貼りつき、たまらなく不快な感触がする。 『ちゃんとそういう趣味があるっていいですね』  雨で街の音が遮断され、代わりにさっきのイケメン錦戸の言葉が耳の奥に響いた。あのひと言で、ふわふわと浮かれていた気持ちが