【短編小説】徒労の人 ~なぜ書くのか~ 第8話
第8話
がくんと身体が揺れ、テーブルについていた両肘が横に滑った。パソコンに頭を突っ込みそうになり、その反射で今度は背中の筋がばねのように縮む。
押し出された空気が声帯を震わせた。悲鳴ともつかない、おかしな音が口から洩れ、それが声が耳から入ってきたことで、しびれたようになっていた肉体に感覚が戻った。ここはどこ? わたしは誰?
たった今見たものは、ただの夢なのか。妙に鮮明で、生々しい感覚が身体に残っている。
小さな貸本屋の薄暗さ、古い本のかびの匂い、手にし