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第7話 チャイムを押し、一歩下がって待った。耳を澄ませていると、ドアの向こうでかすかに近づいてくる足音がする。魚眼レンズからこちらの様子を窺っている気配がしたが、ドアは開かない。 もう一度チャイムを押す。二度、三度。ドアから漏れ出てくる音が、ますます僕を苛立たせた。冷静になろうと努める一方で、こそこそ逃げまわる相手を許せない気持ちが沸き起こる。 ドアを叩いた。しかし応答はない。もう一度叩こうと振りかぶったところで、開錠の音がした。 「なによ、透。どうしたの