マガジンのカバー画像

【短編小説】望月のころ(全11話)+あとがき

12
透、武、さくら、環は高校の同級生。卒業してから10年、武とさくらが結婚し子供が生まれてからも四人組は親しくしていたが……西行法師の詩から始まる、一途で切ない恋愛小説。
運営しているクリエイター

#グループ交際

【短編小説】望月のころ 第1話

   第1話  ねがわくば 花のもとにて 春死なん その如月の 望月のころ    ※※※ 「せーの」を合図に、手にしたグラスを差し出した。 「メリークリスマス!」  四つのグラスと小さなカップが合わさる。勢いよく振り上げた武のグラスから液体が飛び散り、環が悲鳴をあげた。さくらが慌ててキッチンに布巾を取りにいく。 「ちょっと武! なにすんのよ! 見てよ、このワンピ!」  環が金切り声を上げながら武の背を平手で叩いた。大人のはしゃぐ様子に、オレンジジュースを飲んでいた操