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第4話 「ああ、降ってきましたね」 担当の飯田氏の声に、僕は手元の書類から顔を上げた。窓ガラスにぽつりぽつりと雨粒が打ち付けられている。 出版社を訪ねていた。来年に刊行予定の本の装丁について、打ち合わせをするためだ。 「如月さん、傘は持っていますか」 飯田氏が尋ねた。首を振る。雨は夜半からという予報だったし、家を出た時もそんな気配はなかった。地下鉄の駅を降りて地上に出た時に空が暗く陰っていたので驚いた。 「よかったらお持ちください」 僕の返事を待たず、飯