シェア
第9話 次の日の昼、私は図書館に隣接する広場のベンチに座っていた。平日だからか、それとも寒いせいか、子供の恰好の遊び場である広い敷地には誰の姿もない。 妻は今朝になっても機嫌が戻っていない様子だった。こちらから「おはよう」と声をかけてみたが返事はなく、食事の間もずっと黙っている。 食べ終えると、私は「出かけてくる」と言い置いて家を出た。図書館は歩いて十分ほどの場所にある。 ここで夕方まで過ごせば、不必要な会話は避けられるし、妻の機嫌を損ねることもない。無