【短編小説】ニシヘヒガシヘ~夜行バスに乗って~第7話(最終回)
第7話(最終回)
06:00 バスタ新宿 到着
「ねえ、この人本当に大丈夫なの」
キーンとした甲高い声が空気を破った。
「こんな体勢のまま、ずーっと眠ってるんだけど」
カツンカツンとなにかが打ち鳴らされる音が、耳の奥を震わせる。重くて開かない瞼の裏に、細いブーツのかかとが浮かんだ。
「心配はいらない。彼女はもともと寝不足だった」
聞き覚えのある低い声がした。あの不思議な黒い帽子をかぶった、背の高い男性だ。
顔を覗き込まれているとわかっていても、身体はま