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【MTGレガシー】《一時の猶予》から考える、アドに就ての白スタックス的構図

昨日、ニコ動(とYouTube)に久しぶりに動画を投稿しました。
先日の第4回武藏野MTG會の決勝戦のアーカイブです。

・ニコニコ動画版

・YouTube版

MacのPCがお亡くなりになって以来、動画投稿ができていなかったのですが、ついに重い腰を上げてAviUtlに乗り換えることに。

感想。
iMovieって偉大だったんだなって(遠い目

最近MOをやる時間が取れず、全然取れ高がないので全くの未定ですが、またいつかMO動画も作れたらと思っております。

1.いただいた質問

で、その昨日投稿した動画に、こんなコメントをいただきました。

米あり!

今度、指輪物語で登場する《一時の猶予》についてですね。

白い《差し戻し》。「打ち消す」とは言ってない。

かようなコメントをいただいては答えないわけにはいかない。

全世界で5人ぐらいしかいない白スタックスを駆る者の1人として、誠心誠意答えたいと思います。

その上で、このカード1枚だけではなく、どんなカードが白スタックスに使える/使いにくい、どこを見てそれを判断しているかが自分の中でもまとまるといいなと思っております。(願望)

歩哨はスナイドル式の銃剣を、向ふの胸に斜めにつきつけたまま、その眼の光りやうや顎のかたち、それから上着の袖の模様や靴の工合、いちいち詳しく調べます。

宮沢賢治「朝に就ての童話的構図」より引用

※以下は、あくまで白スタックスに限定した話ですのでご承知置きください。自慰行為みたいなもんです。

2.俯瞰的理論

まず結論から申し上げると、《一時の猶予》は白スタックスには採用されないと思っています。

以下、私がそのように考える根拠です。

この白い《差し戻し》の役割について、本家を基に考えれば、「打ち消す」ことよりも「テンポを稼ぐ」ことにあります。

例えば2マナ呪文を差し戻すと、3ターン目(3マナ出る)に、2マナ呪文を再度唱えさせることになりますね。
以後も1ターンずつ相手の挙動はズレていきます。

これが「テンポを稼いでいる」状態であり、よく言われる「実質《Time Walk》」です。
強い。

……本当か?

まず、そこまでして1ターン「だけ」遅らせる利点は何かを考えてみましょう。

例えば、すでに《煙突》にススが乗っていて、1ターン稼げば次の相手のターンには撃ち直すマナ基盤は残らない、という状態なら「パーフェクト《差し戻し》」でしょう。
しかし、そこまでタイミングが完璧なのはかなりのレアケースだと思います。

基本的に、白スタックスは細かくテンポアドバンテージを稼いで、速やかに20点削り切るというタイプのデッキではありません。

もう少し長いゲームレンジで、ターンアドバンテージやボードアドバンテージを稼ぐデッキです。
(私は白スタックスの最も理想的な勝ちパターンはマナロックだと思っています。)

前置きが長くなりましたが、だからこそ「撃たれてから消す」のではなく、「撃たせない」ことが重要です。

言い換えるなら、
テンポを稼ぐ」という時価でかなり変動するアドバンテージで「実質《Time Walk》」するのではなく、
「何も動けない」という「ほぼ本物の《Time Walk》」が理想
ということです。

3.個別的事象

御託を並べましたが、あくまでこれは机上の空論です。

では、今度は実際に《一時の猶予》を使いたい具体的な場面を想定してみましょう。

①致命的な呪文

例えば、対エルフの《自然の秩序》。
打ち消しではないので、《アロサウルス飼い》がいようが関係ありません。

確かに1ターンは稼げる。
…が、それだけです。

先述のとおり、白スタックスは呪文を「撃たせない」ことが重要で、撃たれてしまえばインスタントタイミングでできることは極めて少ないデッキです。
(最近は《孤独》などもいるとはいえ。)

一度撃たれたということは、差し戻してももう一度撃たれ、次は通ってしまう可能性が高い。
くどいですが、その1ターンで勝てるなら最高ではありますが…。

他には、一度差し戻すと元の状態に戻れない呪文には効きます。
《暗黒の儀式》からの《むかつき》や、各種指導霊からの《欄干のスパイ》などですね。

ただ、この手のデッキは《虚空の杯》や《三なる宝球》で十分な場合が多いです。

②打ち消されない呪文

例えば《至高の評決》。
これも①と同じで、結局また撃たれることに変わりはありません。

むしろ4マナ払って自分のクリーチャーを巻き込んでくれるだけマシで、構築物トークンに対する《溶融》X=0だったらどうでしょうか。

打ち直されてしまいますね。下手するとそのターン中に、たった1マナで。
これでは何のアドも稼げません。

そう考えると、使える場面がなかなか限定的なのがわかるかと思います。

③比較対象

現実的な問題として、もっと強い(かもしれない)《中断》が使われていないという事実があります。
そう考えると、このタイプの呪文は、少なくとも白スタックスで使われる可能性は低いのかもしれません。

後述しますが、《一時の猶予》は《中断》よりもさらに受動的な点もマイナスです。
能動的な行動制限(《三なる宝球》など)は山ほどあるので、そちらで十分でしょう。

④撃つタイミング

当然、相手が動いたときです。
これが「受動的」なんですね。

《中断》は相手のアップキープに能動的に撃つことで、さながら《Time Walk》になることもあります。
《差し戻し》と《Time Walk》のどちらが強いかと言われれば、難しくないでしょう。

白スタックスはストンピィ系デッキなので、マナがカツカツで、構えながら縛るのは容易ではありません。

では、構えたのに撃たなかった場合ですが、一見相手のターンを無事にやり過ごしたので《Time Walk》にも見えます。

しかし、盤面は変わっていないのに土地はおそらく伸ばされ、尚かつ相手は次のこちらのターン中にインスタントタイミングで動くマナを残しています。
実質相手に《Time Walk》を撃たれているも同然です。

⑤《ウルザの物語》との共存

相手のターンに構えられる場面は少ないとは言いましたが、最近の白スタックスでは例外があります。
《ウルザの物語》です。

《ウルザの物語》は白スタックスで最も強いカード(断言)なので、一緒に使うことを前提に考えてみましょう。

ゲームスタート時に《ウルザの物語》を置く場合、
まず1章のターンは1マナなのでほぼ何もできないか、《モックス・ダイアモンド》があれば《虚空の杯》を置きたいターンです。
《一時の猶予》は構えられません。

次に、3章のターンは当然構築物トークンを出すためにマナを使う可能性が高いです。
トークンを出さないで1章でマナを出しても第一メインで消えてしまうので、受動的な《一時の猶予》には使えません。

そうなると、構えられるターンは2章のターンしかありません。

しかし、《ウルザの物語》だけでゲームを始めた場合、次のターンは間違いなく《古えの墳墓》か《裏切り者の都》をセットします。
白マナがありません。

つまり、《モックス・ダイアモンド》と《ウルザの物語》のセットでスタートしている場面に限られてしまいます。

もちろん、2章でも3章でも、トークン生成を犠牲にしてでも差し戻したいスペルがあるなら構えるのは有りです。
ただ、その場合、2章起動用の3マナが使えるのに2マナしか使わなかったことになりますから、一体どちらがテンポを損しているでしょう。

⑥自分への《差し戻し》

私はこれは最も機会がない選択肢だと思っています。
想像してほしいのですが、自分の《孤独》想起キャストに対して《精霊界との接触》の魂力を当てた経験がある人が何人いるでしょうか。

ピッチスペルに対してでさえ、当てる余裕はほとんど生まれないので、それ以外のスペルに当てることは想像し難いものがあります。
最高の妨害置物である《三なる宝球》が出ているなら、6マナもかかってしまう計算です。

「テクい動き」は魅力的に映りますし、万が一の手段として覚えておくのはプレイングの幅を広げられます。
しかし、現実的かどうかは冷静に天秤にかける必要があると思います。

また、重ねて言いますが、スタックスはそういったテクい動きよりも、押し付けのほうが優先されます。
相手よりマナが早く伸びるストンピィ戦術では、原則として先手先手で動くべきで、スタックスはコントロールデッキとはいえ、青いコントロールと同様には考えないほうがいいでしょう。

4.おわりに

結局まとまりのない文章になってしまいましたが、私なりに《一時の猶予》について見解をまとめてみました。

未来のカードについて述べるのは後で大恥をかく可能性もありますが、誰かが白スタックスで試して結果を出してくれるなら、それは本当に嬉しいことです。
私が恥ずかしさに耐えかねてこの記事を消したくなる日が来ることを、心のどこかで期待しつつ。

「(前略)引つくりかへつてらあ」
「たつたいま倒れたんだ」歩哨は少しきまり悪さうに云ひました。
(中略)
そのとき霧の向ふから、大きな赤い日がのぼり、羊歯もすぎごけもにはかにぱつと青くなり、蟻の歩哨は、また厳めしくスナイドル式銃剣を南の方へ構へました。

宮沢賢治「朝に就ての童話的構図」より引用

末筆ながら、動画を観てコメントをくださった質問者様に感謝を込めて。

(了)