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わたしと彼女(1)

これで私のことを呆れたとしても、
嫌いになったとしても
それでいいと思えるようになりました。
デビューしてもうすぐ2年、
休業まであと2ヶ月ちょっと、
AV女優渡辺まおになったことで、
あの頃の自分を客観視することができて
受け入れることができるのを
何よりも嬉しく感じます。

己の弱さを認められるようになることが
強さや成長への一歩なんだと
ある人に教えてもらいました。

最後まで上手く綴れるか分からないけれど、
お付き合いください。


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わたしと彼女(1)

セックスすれば、相手の温もりに触れられると思っていた。
セックスしているときだけは、自分だけを見てくれるのが嬉しかった。
セックスさえしていれば、私は私を”透明”にすることが可能だった。

「経験人数どれくらいなの?」と聞かれても
「数えてないや」としか答えられない。
大事な思い出でもないのに覚えているわけがない。

もう誰1人としてはっきりと顔を覚えている人はいない。

それはそう、セックスしているときは私じゃないから、
あの頃は私じゃない私でいることが精神安定の鍵だった。


これは彼女___渡辺まおに出会う前の話。

自他共に認める完璧な優等生だった。
別になろうと思ってなったわけではなかったけれど、皆がそう求めるならばそうあるべきだと思っていたし、その方が親にも周りの大人にも気に入られるというのは明白な事実であった。小さい私が身につけた処世術だった。
窮屈な土地の中で、あの特有の周囲の視線と過剰な介入のもとで、
優等生の私は形成されていった。

生まれて18年目、積もりに積もった窮屈さは私を雁字搦めにしていた。

「ここじゃないどこかに行きたい。」

重苦しい空気に満ちた自習室の中で、
積み上げられた参考書に囲まれながらそう思うのが常であった。

今思えば急に志望先を東京の大学に変えたのは、
自分なりの逃亡への第一歩だった。
他の場所ならどこでも良かったし、進学先にある程度のブランドと偏差値があれば説得できると思った。そのためだったら自分の時間を全て捧げるのはあまりにも容易なことだった。

あんなにも早く一冊のノートを、ペンのリフィルを使い切ったのはあの時が最初で最後だった。

半年後、大学の合格通知書が届いた。まだ雪が降る前の頃だった。

「ああ、これで自由になれる。」

これまでにない安堵感を覚えたのを今でも覚えている。
そんな私とは裏腹に周りは期待の眼差しで、
私をもう一度息のできない泥沼に突き落とした。
「ああ、まだ終わりじゃないんだ。人生って長いな。」って思いながらも
相変わらずの100点の回答で周りを笑顔にさせた。



続く。

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