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【著作権】生成AIを使う時のルール - 知っておくべき重要なポイント

はじめに

こんにちは、kimamanaDr です。

今回は、みなさんも気になっているであろう、生成AIを使う時の著作権のルールについてまとめていきます。

私は法律の専門家ではないので誤りがあるかもしれません。また、記事の都合上、内容をかなり要約していることもご了承ください。

※ 著作権やライセンスなど重要な情報は、必ずご自身で原文を確認して下さい。

著作権って何? 簡単にまとめると

著作権は、創作物を守るための権利です。法律では次のように定義されています。

著作物 思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。

著作権法2条1項1号

プロの絵画や小説、写真などが著作物になるのはもちろんのこと、個人が描いたイラストやブログなども著作物 にあたります。

著作権は創作と同時に自動的に発生するので、特別な登録は必要ありません。例えば、 webサイトは公開した時点で copyright の記載が無くても画像や文章は著作権で保護されています。

SNSなどで画像を公開しても、著作権を放棄したことにはなりません。

生成AIのワークフロー

それでは、生成AIの手順に沿って見ていきます。

AI画像生成のワークフロー

1.AIの学習について

まずはAIの学習についてです。

AIの学習について考えるとき、真っ先にに思いつくのが 著作権で保護されている著作物を、AIが無断で学習に使用するのは問題ないのか? という疑問です。

これについては意見が分かれていて、米国では実際に アーティストが画像生成AIを開発したStability AI 社 や Midjourney Inc. に対して集団訴訟 を起こしていて、裁判は現在も続いています。

では、日本ではどうなっているのでしょうか?

日本の著作権法:AIの味方?

日本の著作権法には、AIの学習に関する重要な規定があります。

少し長いですが、重要なところを抜き出してみます。

著作物は、次に掲げる場合その他の当該著作物に表現された 思想又は感情を自ら享受し又は他人に享受させることを目的としない場合 には、その必要と認められる限度において、いずれの方法によるかを問わず、利用することができる。ただし、当該著作物の種類及び用途並びに当該利用の態様に照らし 著作権者の利益を不当に害することとなる場合 は、この限りでない。
(中略)
二 情報解析(多数の著作物その他の大量の情報から、当該情報を構成する言語、音、影像その他の要素に係る情報を抽出し、比較、分類その他の解析を行うことをいう。第四十七条の五第一項第二号において同じ。)の用に供する場合
三 前二号に掲げる場合のほか、著作物の表現についての 人の知覚による認識を伴うことなく当該著作物を電子計算機による情報処理の過程における利用 その他の利用(プログラムの著作物にあつては、当該著作物の電子計算機における実行を除く。)に供する場合

著作権法第三十条の四、太字は筆者

内容を要約すると、このようになります。

  1. 著作物を楽しむことが目的でなければ、

  2. 著作権者の利益を不当に害さない限り、

  3. 情報解析や機械による処理のために使って良い

これを踏まえて、文化庁や経済産業省が生成AIの利用に関するガイドラインを出しています。

つまりどうなの?

日本の場合は AIによる著作物の学習は合法、ただし著作権者の利益を害する場合は例外あり と解釈できます。

裁判所で判事が相手と見つめ合っている様子のイラスト

著作権とは別に、学習が利用規約で定められている場合

なお、著作権を作者が保有している場合でも、同意を得て AI の学習に利用しているケースがあります。

Googleフォトなどのクラウドストレージや、X(旧Twitter)などの SNS では、投稿した画像を AI のトレーニング に使うことが利用規約に記載 されています。

これらのサービスを使う時は、自分の投稿がAIの学習に使われる可能性があることを覚えておきましょう。

2.生成AIの利用:商用利用はOK?

次に、生成AIを使って作成した画像の商用利用について調べてみます。

Stable Diffusion:驚くほど自由!

まず、Stable Diffusion の場合です。提供元の Stability AI のコミュニティライセンス(2024年7月改定) を確認します。

  • 個人利用は無料

  • 中小企業の商用利用も無料

  • 年間収益 100 万ドル 以上の場合、自己申告で利用料を支払う

  • 利用料を払わなくても、活動は制限されない

すごく自由ですね!

その他の生成AIは?

他の生成AIについても、簡単に表でまとめてみました。

画像生成AIの利用料金と商用利用の可否の表

今回は、有償利用のときに利用規約に制限が記載されていないもの 商用利用可と表記していますが、実際の裁判では違った判断がされる可能性があります。

3.カスタムモデルの使用(Stable Diffusion)

Stable Diffusion では、個人が制作したカスタムモデルを使用できますが、モデルには個別にライセンスが定められています。

私が利用している anima_pencil-XL_v500 の例を示します。

  • 利用:商用利用も可、不道徳な利用は禁止

モデルについては、ほとんどのものが商用利用が可能ですが、一部に制限されているものもあります。

また、別途 LoRA などの追加データを使用する場合 は、そのライセンスの確認も必要です。

4.プロンプト:要注意ポイント

プロンプトを入力する時も気をつけるべきことがあります。著作権が問題になるのは、「類似性」と「依拠性」の両方がある場合です。

  • 類似性:原作に似ている

  • 依拠性:原作を知っている

例えば:

  • プロンプトに漫画やアニメの題名・キャラクター名・作者名を入れる → 依拠性あり

  • 原作を知っていて、そのイメージで「1980年代の日本のアニメ、青い服、少女、空飛ぶ乗り物」と入力 → 出力が似ていれば依拠性あり

  • 原作を知らなくても、AIが学習している → 依拠性ありと判断される可能性がある

風の谷のナウシカ スタジオジブリ ホームページ

自分の知らないうちに元の作品に似てしまった場合、原作者から指摘があればすぐに対応が必要です。

トラブル防止のために、入力したプロンプトは保存しておく のがおすすめです。

5.素材の使用

画像生成AIでは、画像をもとにして新しい画像を生成することができます。これは Image to Image と呼ばれます。

赤髪モヒカン兄貴の写真
モヒカンの頭を赤く染めた両肩にタトゥーを入れたパンクな兄貴が、ハーレー・ダビットソンに乗って高速道路を走っている写真
モヒカン頭の兄貴がマジメな格好で証明写真に写っている
企業の採用面接用の写真、知的なメガネ、営業スマイル、ネクタイ、Image to Image

Image to Image を使うときは、他人の著作物や肖像権を侵害する画像の利用は禁止 されています。

漫画やアニメのキャラクターを利用してはいけません。また、他人の写真を許可なく使用してもいけません。

ストックサイトの利用:自由に使える素材も

利用する機会が多いと思うのが、ストックサイトなどから素材をダウンロードして使う場合です。

photoed by congerdesign, Pixabay

素材のうち、次の2つは基本的に自由に使えます。

  • PD(パブリックドメイン):作者の没後70年が経過して著作権が切れたもの

  • CC0(クリエイティブ・コモンズ・ゼロ):作者が著作権を放棄したもの

多くの画像ストックサイトでは、独自にライセンスを定めて上記の CC0 に相当する形 で提供しています。

例:Pixabay の「コンテンツ ライセンス

  • コンテンツの商用利用は可能

  • オリジナルに変更を加えずに販売するのは禁止

  • 不道徳・違法な利用は禁止

これらの画像は Image to Image の素材として利用することができます。

ControlNet lineart_realistic

6.生成した画像の著作権:あなたのものになる?

AIで作った画像の著作権はどうなるのでしょうか?

著作権は認められない!

生成AIでは、プロンプトはアイディアで創作物ではありません。同じプロンプトを使えば誰でも似たものが作れるので、生成物は 原則的に著作物とは認められません

例外はある?

人の創造的寄与がある場合は、AI生成物でも著作権が認められるケースがあります。

まず、AI画像をもとに加筆・修正をした部分 については、著作権が認められます。

白人女性の漫画家が笑いながらタブレットとで作業している写真

AIのみで作成した場合でも、創造的寄与があると認められる可能性はゼロではありません。

文化庁の指針では、その際の参考基準として次の3つが挙げられています。

  • プロンプトの長さ

  • 試行回数

  • 複数の画像からの選択したか

具体的な基準は今後決まっていくと思いますが、実際にはAI生成物に著作権が認められるハードルはかなり高いのではないかと予想されています。

著作権を主張したい場合は、プロンプトを含めたログを保管しておく ことが大切です。

引用と転載:他の人の作品を紹介する時

noteやSNSで他の人の作品を紹介することもあると思います。その際のルールについて確認します。

  • 著作物の無断転載は禁止

  • 引用はOK(ただしルールを守ること)

引用が認められる条件

  1. 引用する必然性がある

  2. 引用部分をほかと区別して表示する

  3. 引用部分を改変しない

  4. 引用元を明記する

  5. 引用部分がコンテンツ全体の半分を超えない

詳しいルールについては、著作権法 などををご確認下さい。

まとめ

生成AIで気をつけるべきルールについてまとめました。

生成AIはまだ普及から 1 ~ 2年 しかたっていないので、個々のケースについて具体的な判断例はまだありません。

今後の事例を注意深く見ていく必要があります。

最後までお読み頂きありがとうございます!


参考書籍

先読み!画像生成AI インプレス 2023年3月

Stable Diffusion スタートガイド SB creative 2024年3月



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