2024年3月19日、サムアルトマンへのインタビューがYoutubeで公開されています。
昨年11月のOpenAIの騒動、GPT5、イーロンマスク、Sora、AGIなどなどたっぷり2時間の動画になっていまして、重要な部分を抜粋し、要点をまとめて考察します。
インタビューの全容
2時間のインタビューは以下の話題で進んでいきます。
非常に密度の高い内容でしたので、ぜひ見ていただきたいのです。
インタビューの内容で個人的に特に印象に残ったところを抜粋してお伝えいたします。
*Youtubeのインタビューでは自動翻訳で日本語字幕を出すことができますが、自動翻訳から正確に内容を理解するのは難しいかもしれません。
OpenAIの会社運営について
OpenAIという会社を運営していくにあたって、取締役にどのような人が必要かという議論について、サムアルトマンは以下のように回答しています。
”技術の専門家は確実に必要です。そして、「この技術を世界で最も人々を助ける方法でどのように展開できるか?」と考える人々が必要です。さらに、非常に異なる視点を持つ人々も必要です。あなたや私が犯すかもしれない間違いは、技術的な理解だけが重要だと考えることですが、それは確かに取締役会が持つべき対話の一部です。しかし、それが社会や人々の生活にどのように影響を与えるかについても、そこに反映させたいと思っています。”
実は私は、取締役会にどのような人を起用するのかについて、最初はそれほど興味を持っていませんでした。しかし、サムアルトマンへのインタビューを通じて、それがとても重要で関心を向けるべきことだと感じました。特に、AGIに到達することをなしえる会社の取締役会は、私たち一般人にも大きな影響を及ぼすかもしれません。
インタビューからはいかが重要な観点であると見ています。
技術専門家と社会的視点のバランスの重要性: サムアルトマンは、技術専門家だけでなく、「この技術を世界で最も人々を助ける方法でどのように展開できるか」と考える人々、つまり技術的な側面だけでなく、社会的、倫理的な側面を考慮できる人々の重要性を強調しています。これは、AGIのような影響力のある技術がもたらす広範囲にわたる影響を考慮に入れ、バランスの取れた意思決定を行うために必要です。
異なる視点の価値: 彼は、「非常に異なる視点を持つ人々も必要」と述べており、これは多様性を重視する姿勢を示しています。異なる背景、専門知識、経験を持つ人々を取り入れることで、より広範囲の可能性を探求し、予期せぬリスクや倫理的な問題を見落とすことなく、技術を社会に導入する最適な方法を模索できます。
社会への影響を考慮した意思決定: サムアルトマンの言葉からは、技術の展開に際して、その社会への影響を深く考慮している姿勢が伺えます。彼は、AGIのような技術が人々の生活や社会全体に与える影響を、技術開発の段階から積極的に考慮し、より良い未来への貢献を目指していることを示唆しています。
サムアルトマンの発言は、技術的な進歩と社会的責任のバランスを重視する姿勢を示しています。
Soraのリリース、さらに著作権について
2024年2月に発表されてから、Soraはまだリリースに至っていません。それについて、Soraのリリースについては、まだやるべきことがあると語っていました。それが以下についてです。
効率性の向上: サムアルトマンは、システムをリリースする前に、人々が期待するスケールで機能する効率性のレベルに達する必要があると述べています。これは、Soraが実際に広く使われるためには、その処理能力やレスポンス速度がユーザーの期待に応えられる程度に高まる必要があると考えているようです。
ディープフェイクや誤情報への対処: Soraや類似の技術が生み出す可能性のある問題、特にディープフェイクや誤情報といった問題への対策を講じることも重要です。サムアルトマンは、OpenAIが世界に提供するものについて慎重に考えており、新しい技術が悪用された場合に起こりうる負の影響を十分に理解し、対処する必要があると述べています。
そして、ここでは著作権についても触れており、以下のように発言をしています。
”価値あるデータを作成する人々が、それを使用するために何らかの形で報酬を受けるに値するかどうかです。そして、私はその答えがイエスだと思います。”
私個人としても価値あるデータを作成する人は何かしらの報酬を受け取るべきだと思います。生成AIなどの技術は人々の創造の技術をもっと伸ばすことを目的とすべきと考えていますが、AIによって人の創造のモチベーションを奪うような行為はその技術の目的に反することになります。
とはいえ、今はそれをどうやって実現するかについてのアイデアを思いつくことができません。これらは一企業の問題ではなく、法的な問題も関係してくるものです。
これらについて真剣に考えているということを発表したことには敬意を表したいと思いますが、具体的な解決策はなかなか見えてきません。
また、ディープフェイクや誤情報についてもリリース前に問題が解決するとは思えません。問題の解決を待っていたらSoraはリリースできなくなってしまうのでは??
AIの仕事の質と人々の仕事がどうなるか
AIが人々の仕事を奪うことに対してよく議論がなされますが、それについても今回のインタビューでサムアルトマンが言及しています。
”人々は5年間でAIがどれだけの仕事をするかについて話します。人々が持っている枠組みは、現在の仕事の何パーセントが完全にAIに置き換えられるかというものです。私が考えるのは、AIがどれだけの仕事をするかではなく、AIが一度にどれだけのタスクをするかです。経済全体の5秒のタスク、5分のタスク、5時間のタスク、あるいは5日のタスクを考えたとき、AIはそれらの何をできるか?それがAIができる仕事の数よりもずっと興味深く、影響力があり、重要な質問だと思います。それは、より高度な抽象化レベルで人々が操作できるようになるツールです。だから、多分人々は自分たちの仕事をより効率的に行えるようになります。そして、ある時点でそれは単なる量的な変化ではなく、頭の中に保持できる問題の種類についても質的な変化となります。YouTubeの動画についても同じだと思います。多くの動画、おそらくほとんどが製作にAIツールを使用しますが、基本的にはある人がそれについて考え、まとめ、一部を行うことによって駆動されます。ある種、指揮して管理しています。”
この件について、将来的に頭の中に保持できる問題の種類について語っているところに洞察力が鋭いなと感心しました。
今後は創造性が非常に大事になっていきそうです。今でももちろん非常に大事なものだと思いますが。
GPT-5の見通し
GPT-4やGPT-5についての話題の中で、サムアルトマンはGPT-4についての感想を聞かれ、その後以下のように発言していました。
”私たちが到達する必要がある場所や、私が信じる到達点に比べると相対的に(GPT-4はよくない)です。GPT-3の時、人々は「おお、これは素晴らしい。これは技術の奇跡だ」と言っていました。そしてそれは、確かにそうでした。しかし今、私たちはGPT-4を持っていて、GPT-3を見ると、「それは想像を絶するほどひどい」と感じます。5と4の間、そして4と3の間の差と同じように、私たちの仕事は数年先の未来に生き、現在持っているツールを振り返った時にそれがどれほどひどく見えるかを覚えておくことです。それが私たちが未来をより良くするために確実に行う方法です。”
GPT-5という名前でリリースされるかどうかさえ分かりませんが、GPT-3からGPT-4への進化と同じくらいGPT-4からGPT-5への進化が進むことをイメージしているようです。
ちなみにGPT-3といえば推論がままならないような状態でした。GPT-4を使用している確かにおもちゃのように感じてしまうかもしれませんが、GPT-5とGPT-4の差がそのくらいになるということですから、どうしても期待してしまいますね。
GPTができることとできないこと
今のGPTは各トークンにおいて消費される計算資源が同じであることについて言及し、GPTができることとできないことについて触れています。
この質問も非常に興味深かったですが、サムアルトマンの内容をまとめると以下のようになります。
GPTができること
GPTができないこと
未来の通貨
私個人にとって、今回のサムアルトマンのインタビュー動画の中でもっとも印象的なのが以下のセリフです。
"コンピュート(計算能力)は未来の通貨となるだろう。世界で最も貴重なコモディティの1つになると考えている"
会話の中で、サムアルトマンはコンピュート(計算能力)が未来の通貨となり、最も貴重なコモディティの1つになると考えていることを強調しています。彼は、大量の計算能力を生み出すために大きく投資する必要があると信じています。
計算能力に関する市場を携帯電話のチップ市場と比較して説明する際、計算能力が独特の市場である理由を述べています。スマートフォンの市場は、人々が一定の周期でデバイスを更新するため、限られた需要がありますが、コンピュートの需要は、それが提供する「インテリジェンス」がより広範な用途に使われるため、はるかに弾力的であるとアルトマンは指摘しています。
彼は、計算が非常に安価になれば、個人が日常的なタスクにそれを使用することから、がんの治療方法を見つけるような重要な問題に取り組むまで、様々な用途で活用されるようになると述べています。そのため、世界は膨大な量の計算能力を必要とするだろうとアルトマンは予測しています。
彼は、この巨大な需要を満たすために直面する主な課題として、エネルギー供給、データセンターの建設、供給チェーン、チップの製造などを挙げています。
この部分の発言については、投資家としての彼の優れた洞察力を感じました。
広告について
今回のインタビューの中では、googleに対しての考えから広告についてのサムアルトマンの考えを述べています。今後のAIにとっては大事な発言ではないかもしれませんが、個人的には非常に賛同できる内容だったので紹介させて致します。
”私は広告を美的な選択としてあまり好きではありません。インターネット上で広告が必要だったのは、いくつかの理由からですが、それは一時的な産業です。今や世界はより豊かです。人々がChatGPTに支払い、得られる回答が広告主に影響されていないことを知っているのが好きです。LLMに適した広告ユニットがあること、偏りのない方法で取引ストリームに参加する方法があることは確かですが、ChatGPTに何かを尋ねたときに「この商品を買うことを検討してください」や「休暇でここに行くことを検討してください」などと言われるようなディストピアの将来を考えるのも簡単です。”
AGIができたらどうなる?
AGIについては多くの研究者や専門家の間で議論されていますが、明確に定義が決められているわけではありません。ですので、AGIを多角的にとらえることは非常に重要だと思います。そういった観点に立つと、AGIができたら世界がどうなるかという質問はAGIを理解するためには非常に有意義であり、インタビュアーの質の高さを感じました。
これに対してサムアルトマンは以下のように回答しています。
”これが正しい定義かどうかは分かりませんが、システムが世界の科学的発見のペースを大幅に加速させることができれば、それは大きなことです。私は、実際の経済成長のほとんどは科学技術の進歩から来ると信じています。”
サムアルトマンは、科学的発見のペースを大幅に加速させるのではないかと考えているわけですね。実際の科学的発展には物理的な実験が必要だったりするため、急速にペースが上がるわけではないという話もありますが、それでも論理的に多くの発見が見つかるかもしれないということに期待をしてしまいます。
AGIへの最初の質問は?
これもAGIを多角的にとらえる質問です。
”まあ、確かにここで研究をしている人たちが私より先にそれをするでしょう。でも、この質問については実際にかなり考えてきました。先ほど話したように、これは良くない枠組みだと思いますが、もし誰かが「OK、Sam、完成だ。これがラップトップで、これがAGIだ。話してみて」と言ったら、最初のAGIが答えられるだろうと私が思う質問は驚くほど難しいです。最初のものが物理学の大統一理論、物理学のすべての理論を説明してくれるわけではないと思います。その質問をするのが好きですし、その答えを知りたいです。”
AGIのガバナンス
サムアルトマンは、人工一般知能(AGI)の開発において、その力を一人の人間や一つの組織が独占することの危険性を強調しています。彼は、AGIやOpenAIに対する完全なコントロールを持つべきではないという立場を明確にしており、ロバストなガバナンスシステムの必要性を唱えています。
サムアルトマンは、AGIの開発と管理に関する決定は、一企業の範囲を超えるものであり、政府が関与して「ルール」を設定すべきであると考えています。
AGIのリスク
AGIへのコントロールを失うことを恐れているか?という質問について、サムアルトマンは、それが一番優先度の高い問題ではないと発言していました。以前に心配していたことがあり、将来的に心配する可能性があるかもしれないとしつつも、今はそれ最優先の問題ではないと感じているようです。
また、ここではAIが「箱から抜け出してインターネットに接続する」という、いわゆる「箱からの脱出」のリスクに関しても発言をしています。これは、AIが自らの制限を超えて自律的に行動し始め、予期しない方法でインターネットにアクセスすることを懸念するものです。
この問題に関しては、多くのAI Safetyの研究者たちが関心を寄せ、深く検討していますが、サムアルトマンの発言によると、この問題に関して顕著な進展はまだないとのことです。
サムアルトマンは、この問題に対する研究者たちの集中が重要な議論であると認めつつも、その集中が他のAIに関連する重要なリスクの議論を抑圧してしまっていると指摘しています。
つまり、AIが「箱から抜け出す」というリスクに対する過度の注目が、AIの安全性や倫理性に関する他の多くの重要な側面を探究する機会を減少させてしまっている可能性があるとみているようです。
まとめ
2024年3月19日に公開されたサムアルトマン氏へのインタビューは、OpenAIの騒動、GPT-5、Sora、AGIに至るまで多岐にわたる話題が扱われました。
本記事では、個人的に重要だと感じられた部分を抜粋いたしました。
OpenAIの取締役会で望まれる資質、技術が社会に及ぼす影響への配慮、そしてSoraのリリースに関する課題、GPTモデルの発展、AIの将来に対する洞察、広告に対する批評的見解、そしてAGIに関する議論も含まれています。
サムアルトマンは、計算能力が将来の通貨となると予見し、AGIの適切な統治とリスク管理の必要性を強調しています。このような考え方に触れて、今後の私たちの将来の見通しについて鋭い洞察を見ることができました。
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