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熊野のお祭り②

今回は本宮・新宮・那智のお祭りをみていきます。

湯登り神事(ゆのぼりしんじ)

湯登り神事は、4月に行われる熊野本宮大社例大祭の始まりを告げる神事です。
湯の峰(ゆのみね)温泉で潔斎した稚児に神を宿します。
稚児は神の依り代ですから、地面に足をついてはいけません。
道中は始終父親に肩車をされたまま進みます。

まずは熊野本宮大社にお参りし、次に湯の峰温泉へと向かいます。
温泉につかり身体を浄める湯垢離(ゆごり)を行い、次に煌びやかな狩衣姿で湯峯王子社を目指します。
稚児の額には「大」の文字。
神は稚児の頭に降りるとされていますから、「大」の字は神が降臨した証らしいです。
ここでは八撥(やさばき)神事という神を降臨させるための神事が執り行われます。
父親の介添えを受けて稚児たちが舞楽を披露します。
そして帰りは徒歩で大日越えです。
約3.4㎞の山道を進み大斎原を目指します。

扇祭(おうぎまつり)

扇祭とは熊野那智大社の例大祭のことで、那智の火祭とも呼ばれています。
祭典は朝から始まり様々な儀式が執り行われ、夕方頃まで続きます。

見どころは扇神輿(おうぎみこし)大松明です。
扇神輿は那智の大滝の姿を表した神の依り代で、縦長に組まれた木枠を鮮やかな布と扇で飾ったものです。
熊野十二所権現になぞらえて12体の扇神輿がたてられます。
そして大松明は扇神輿を先導し、道を浄める役割を担います。
桧でつくられたこの大松明も扇神輿同様12体あり、重さは50~60㎏もあるそうです。
まさに那智の火祭を象徴する存在です。

御船祭(みふねまつり)

御船祭は熊野速玉大社の例大祭で行われるお祭です。
熊野川に浮かぶ御船島を舞台に神の来臨を再現したものです。
鎌倉時代成立の『夫木和歌抄(ふぼくわかしょう)』に次のような歌が記されています。

三熊野の うらわにみゆる みふね島 神のゆきゝに 漕(こき)めぐるなり

出典:藤原長清撰『夫木和歌抄』巻第廿三 写本(早稲田大学図書館HP 古典籍総合データベース「夫木和歌抄. 巻第1-36 / 藤原長清 撰」〔https://archive.wul.waseda.ac.jp/kosho/he04/he04_01765/he04_01765_0023/he04_01765_0023.pdf〕42カット目)

9艘の早船が神輿を乗せた神幸船を御船島へと先導します。
早船にはそれぞれ9人の漕ぎ手が乗り込み、御船島を巡ってゴールの川原まで先を競います(早船競漕)。
早船に導かれた神幸船も諸手船(斎主船)に曳舟され御船島を巡り岸へと至ります。
その間、諸手船ではアタガイウチという赤い着物をまとった女装の男性がハリハリ踊りと呼ばれる動作を行います。
「はやくはやくこちらへ」と神様を招き寄せます。
その後早船に従ってもう一度御船島を巡り再び岸へ戻り、続いて次の儀式のため御旅所へと出発していきます。

お祭りの様子からは猛々しい印象を受けますが、その実女神・夫須美大神のためのお祭りです。
男神・速玉大神のための儀式は例大祭初日の神馬渡御式です。
夫須美大神は女神なので、速玉大神とは異なり馬には乗らず神輿で運ばれていきます。

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