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人工超知能は人工汎用知能よりシンプル

人工超知能 (Artificial Super Intelligence) と人工汎用知能 (Artificial General Intelligence) のお話をします。


人間の知能の10000倍の人工超知能

人間の知能の10000倍というと途方もない性能と思われるかもしれません。
Ray Kurzweilが2005年に人工知能が人間を追い抜かす瞬間を人間が目撃することはないと言っています ([kurzweil])。倍々ゲームで加速する人工知能は伸びはすさまじくあっという間に人間は抜かれるからだそうです。
Kurzweilがシンギュラリティを語ったときには18ヶ月で2倍になる半導体の性能がベースになっていました。10年で約100倍です。今年のGTC2024でJensen Huangは過去8年でGPUの性能が1000倍になったと述べています([nvidia])。Blackwell NB200 NVL72で72個のBlackwell GPUをシステム化して、1個のGPUとしてプログラミングできるようになっていることを考えればソフトウェアサイドから見れば8年で10万倍近くになっています。来年Blackwell Ultra、再来年にRubinが出ますから、10年で100万倍が視野に入っています。これからの10年でも100万倍になると予想しています。従来なら100万倍になるのに30年かかっていましたが、いまなら10年です。

コンパイラーコンパイラーの例

ものすごい複雑なものを自動的に作り出すのは難しいと思うかもしれません。プログラミング言語を機械語に変換するプログラムをコンパイラーといいます。コンパイラーは非常に複雑な処理をしています。このため、コンパイラー・コンパイラーという言語規則を入力したらコンパイラーを出力するプログラムがあることを知ったときにはどれほど難しいことをするのだろうと思いました。コンパイラーの先生が笑って、コンパイラー・コンパイラーは簡単だ、巨大なテーブルがあればいい、と言った時には驚きでした。結局、入力するのは機械にとってわかりやすい言語規則なので、それを読みこんで機械語に対応するテーブル変換をすれば済むようです。
難しい問題のほうが解く方針は簡単という一例です。
数学の未解決の難問でも、それ自体では解けない難問をより一般的な問題空間で解くと解けてしまうという例はいくつもあります。例えば、ポアンカレ予想はサーストンの幾何化予想の解決に付随する形で解決されました ([wiki])。

人工超知能の研究は人工汎用知能の研究よりシンプル

シンプルといっても生成汎用知能より前に人工超知能ができてしまうわけではありません。生成汎用知能の研究では世界モデルを研究することが求められます。世界はオープンで常に変動していますから、これを理解するのは困難のレベルが高いです。
人工超知能の研究では具体的に世界を学習することではなく、世界を学習する人工知能を研究する人工知能を作り出すことになります。これはある意味、コンパイラを書くよりコンパイラ・コンパイラを書くのがシンプルなのと同じようにシンプルです。
人工汎用知能ができたら、人間と違って知能はいくらでもコピーできますから、大量の人工汎用知能に人工知能研究をさせれば解けてしまうと予想します。

むすび

ソフトバンクグループの孫さんが自分の存在意義といっている人間の10000倍賢い人工超知能 (ASI)は意外に簡単に解けてしまうかもしれません。抽象化が高くなると問題としては難しくなります。一方、問題を解く方法論としては方法はひとつしかなくて突き進むことになります。

参考文献



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