見出し画像

デジタルディバイドからAIディバイドへ:ハードディバイドとソフトディバイド


はじめに

デジタルデバィドとはdigital divideの邦訳である。デジタルデバイドともいうが政府の白書ではデジタルディバイドとしているのでここではディバイド表記でお話しします。

デジタルディバイド

情報通信技術(IT技術) の恩恵を受けられる人と受けられない人がいることを示します。
国際デバイドと国内デバイドがある。国内デバイドはビジネスデバイドとソーシャルデバイドがあります。ビジネスデバイドは企業間格差を、ソーシャルデバイドは収入、職種、地域、人種などによる格差を指します。
雇用や給与といった経済的な格差をはじめ、入手できる情報の量や質における格差を懸念する概念です。
政府の電子化が推進されるたびに、高齢者などデジタル経験の浅い国民をどうするかという文脈で総務省などもデジタルディバイドの解消については継続的に議論を行っています。

AIディバイド

AIはIT技術の一種であるが、AIを使いこなせる人や企業と使いこなせない人や企業との格差をAIデバイドと言います。デジタルディバイド同様に国際格差、国内格差があり、ビジネスディバイドやソーシャルディバイドがあります。
AI (人工知能) はすべての専門知識を代替し高度な論理能力を発揮するので、格差は縮小すると主張する向きもあります。渡辺安虎東大教授が今週のテレビ東京WBSのコメンテーターとして:

  • IT技術 格差拡大

  • AI技術 格差縮小

とコメントしています。
長期的には確かにそうで、AIは数多くの高度ホワイトカラーの仕事を代替する可能性があります。
黎明期の現在は、短期的に逆の現象が起こっています。すなわち、高度な知的認知作業を使いこなしているのが既に高度に知的認知能力を持っている人たちなのです。

ハードディバイドとソフトディバイド

定義

AIディバイドを考える上で重要なのはハードディバイドとソフトディバイドの区別です。

  • ハードディバイド AIを使っていない人と使っている人の格差

  • ソフトディバイド AIを使いこなせていない人と使いこなせている人の格差

LINEヤフーを軽んじるわけではないが、最近読んだ記事なので例にあげさせていただく。『「LINEヤフー」生成AIを社内外で活用推進へ、年間売上約1100億円増を狙う 』という記事で、社内のAI利用で生産性が通常業務で約7%、ソフトウェア開発で約10~30%改善したと紹介されています。
最近の生成AIは医師国家試験、弁護士試験、会計士試験を上位10%で通過するというレベルです。それが月3000円で使い放題で生産性向上が10~30%というのは低すぎではないかと思えます。
もちろん、会社の業務の再定義を行わずに、従来通りの業務所掌、人員、組織、成果管理でやっていれば、そんなものかもしれません。
使っているけど生産性向上は10%という組織と生産性が10倍という組織に分かれていく。それがAIのソフトディバイドです。

ソフトディバイドを生む要素

AIのソフトディバイドを生む要素が2つあります。

  • 高度な認知能力

  • プロンプトエンジニアリング

プロンプトエンジニアリングというのが話題になっています。同じ生成AIでもどんなプロンプトを入れるかによって結果の質が全然違います。
実は小手先のプロンプトエンジニアリングよりもっと大事なのはAIとの対話能力です。対話というのは両者があって初めて成り立ちます。AIと対話するにはAIの能力を認識するとともに自分の世界認識を疑う能力が必要です。これは高度な認知能力です。
目的が間違っていた李曖昧だったりすると問題を解いても意味がなかったりします。そのため、何の目的で生成AIを使うか、その目的をどう表現して生成AIに与えるかが重要です。
生成AIを的確に使うのには、そもそも正しい目的を設定するとか、AIの出力が目的に沿っているかを検証するという能力が必要です。これは高度な認知能力で誰でも持っているというものではありません。
AIに高度に戦略的な問題を解かせようとすれば、高度に戦略的な問題を解くにはどうしたらいいかという認知能力が求められます。
これが目下のソフトディバイドを生んでいる原因です。

おわりに


生成AIで生産性10倍というのは並大抵のことではありません。
今後も生成AIで生産性10倍の方程式が発見されたらここで紹介してきたいと思います。

参考文献

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?