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大僧正の思い出①

私は小さい頃から(5歳くらいと記憶している)、毒母に連れられてお寺に通っていた。毒母が昔、友達から「凄い霊能力のある和尚様がいる」と噂を聞きつけたらしい。

大僧正のところには、いつも大勢の悩みを抱えた人が全国から集まっていた。
「友人が交通事故に遭ってしまい、今瀕死の状態であの世とこの世の境目にいる。どうかこちら側に連れ戻してほしい」とかいう類の相談だった。
タクシーの運転手は「タクシーを盗まれたからどこにあるか霊視してほしい」と相談していて、「ここから数百メートル先の南西の方角に乗り捨ててある。雑木林の中にタクシーがある」と霊視され、その通りに見つかったりしていた。
こんなふうに大僧正様は困っている人を親身に助けていたのだが、中には不倫をしていた女性がいて、「何が何でもあの男性と結婚したいから、奥さんに呪いをかけてくれ」などと相談していることもあった。
そういう時の大僧正の怒りは凄まじいものだった。「あなたは人間の道を外している!!」と。
相談室はふすま1枚を隔てているだけなので、物凄い怒号が聞こえてきた。
どうも不倫というものは、人間の道を外した行為のようだ。
霊的な観点から言って、動物と変わらないのかもしれない。

大僧正が小さい頃から身近にいたので、あまり考えることも無かったのだが、今振り返ると霊能力が凄かったというばかりではなく、「人としてどう生きるべきか」ということも教えられていたのだとつくづく思う。