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引っ越しバタバタ。

 故あって転居したのであるが、鬱っぽくなってしまい、引っ越し屋が来てもまだ荷造りは終わらず、掃除など適当に済ませ、猫を紙ん袋に詰め込んで(リュックです)、電車を乗り継いでアパート(一応、マンションらしい)へ向かった。
 田舎から都会へ。しかしながら、住宅が立ち並ぶ郊外といってもいい場所だ。そして気になったのは、通路に異臭が充満し(素通しの場所である)、蝿がわんわん飛び交っていることである。
 既に到着していた大家さんも、不動産屋の女性もそのことには触れないので、そういう建物だと思うことにした。
 しかし、居住するとなると、その異臭と蝿が気になる。速攻で薬局へ行き、玄関ノブに引っ掛ける除虫剤と、キンチョールを買ってきた。あまり効果はない。知人が、汚部屋があるか、ひとが死んでいるかも知れないなどと、恐ろしいことを云う。
 そんなの怖すぎるやないかー。
 一週間経ってもカーテンがないままだったので、IKEAへはじめて赴いた。コストコみたいだけれど、有料会員制ではない。東急ハンズやフライング・タイガー・コペンハーゲン好きのわたしには、遊園地のように楽しめるところであった。

 捗らないのは荷解きである。
 時間はあるのだが、どうにもやる気が出ない。実際、疲れてもいる。引っ越しした翌日など、転居届けを出し、免許の書き換えに行き、合鍵を作り、いったん帰宅したものの百円屋に用があり、しかもそれがすべて一キロ以上先にある。通行人、述べ八人に道を訊ねつつ(スマートフォンを所有していない為)辿り着いたイオンのダイソーで携帯電話の充電ケーブルを買い、帰宅しようとするも、道に迷う。
 何故なら既に暗くなっており、わたしは極度の鳥目なのだ。そうでなくとも土地勘のない場所である。
 この日だけでも二十キロ以上、歩いたと思う。当然、翌日は半死の状態であった。

 荷解きもしないで毎日何をやっているかというと、ほぼ寝床の中に居る。まあ本日は電車を使って出掛けたが、用がなければ一日中、家から出ない。それは引っ越す前と同じである。
 気力が落ちているので、夢中になってやっていた『とびだせどうぶつの森』も、一日にほんの少ししか出来ていない。
 このどうぶつの森であるが、こうしたゲームに特有である住民との交流が煩わしくてしょうがない。現実世界でもひとと関わるのが苦手なのに、ナニ故、遊びである仮想の世界でまで、対人関係を築かねばならないのか。一応、友好度を上げる為に話し掛けはするが、ビクビクものである。
 何故ならば、彼奴らは透視能力を持っており、此方が何を持っているのか察してしまうのだ。そして、それを寄越せと云ってくる。適正な取引であるなら納得もいくが、売り値九千円(ベル)の竜宮の使いを買い値二千円(ベル)以下の壁紙と、或いは五千円(ベル)の石鯛を三百円(ベル)程度の服(まったく要らない)と交換してくれなどと吐かすのだ。
 これはもう、追い剥ぎである。断っても友好度は下がらないらしいので、あまり酷い条件だと断るようにした。ごく稀に、古道具屋より高い値段を云ってくると感激して、高価なものを手紙に添えて贈ったりする。
 集られるのは厭だけれども、ものは余っているので差し出すのは吝かではないのだ。
 これは現実の世界でも同じであろう。図々しいことを続けていると、相手がよほどのおひと好しか馬鹿でない限り、見限られる。疎んじられない方が稀だ。

 ああ、それにしても、飯を食っている今でさえ、部屋の裡まで臭い。消臭剤を振り撒きながら飯を喰っても、旨い訳がない。なんとかしてくれ。

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