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アタゴオル通信、4。

 ついに『あつまれ どうぶつの森』デビューを果たしてしまった。
 かなり迷ったのだが、今を逃すと手にすることは出来ないと判断し、思い切ってソフトと同梱セットをアマンゾで購入した。いや、この値段では本当に、今を逃したら絶対に手に入れられないだろう。
 やたらでかい段ボール箱の中には、本体とソフト、子供なら喜ぶであろうカバーにケース、amiiboカード五袋、それを収納するファイル、キーホルダーまでついていた。附録の分は大した金額ではなかろうが、カード以外は邪魔なのでその分安くして慾しい(カードが一番高いだろう)。
 五月の終わりに届き、物事を始めるにはキリのいい日じゃないと落ち着かないので、翌日の六月一日まで温存した。
 DSと違って横に広いので、かなり大きく感じる。これを持ち歩くのは大変なのではなかろうか。コンパクトカメラより重いくらいで、コンパクトカメラより嵩張る。まあ、持ち歩くつもりはないのでいいのだが。
 今回もやはり、思い入れのあるアタゴオルの名を島につけた。命名の際、島の読みを選べるのが面白かった。子供でもそんなことに拘るのだろうか。読みも何も、口にするのをそのまま文字に表す者が結構居る。質問を扱う掲示板などでよく見掛けるのが、「何々というのは」を「何々とゆうのわ」と普通に書いているひとである。
 知能が低いのか子供なのか、学校は何を教えているのだろう。昔と違ってキーボードで文章を入力することが多い筈だ。喋り言葉の発音のまま入力しても、漢字には変換されない。体育を「たいく」と打っても、目当ての漢字は出てこないのだ。まあ、成人してから体育とワープロソフトで打ち出そうとするのは学校関係者くらいだろうが。
 閑話休題。
 手探りでやり始めた『あつまれ どうぶつの森』(以後、あつ森)だが、前知識としてあった「無人島でのスローライフ」というのが間違いであることが判った。
 パッケージツアーの一員として無人島体験旅行に参加するのだが、自分のキャラクター以外に二名の参加者が居るのだ。後で調べてみたところ、このふたりの性格はアネキ女とハキハキ男と決まっているらしい。ゲームを続けてみて、これは序盤に必要な配置であることが判る。
 アネキ女は蜂に刺された姿を見せると、『とびだせ どうぶつの森』(以後、とび森)では薬をくれたが、あつ森では薬のDIYレシピを寄越す。兎に角なんでも手作りするのだが、とび森ではセーブすると刺された顔の腫れが消えるので、一旦はそうしてみた。
 が、ゲームを再開してもお岩さん状態のまま。仕方がないので、アネキ女の黒豚アグネスのところへ顔を見せに行ったのである。
 ハキハキ男の役目は、家具のレシピを教えることではないかと思う。今のところそれくらいしかない。竹の家具のレシピを教えて貰っても、竹がないのでどうすることも出来ないのだが。
 他に参加する者が居てもいい。しかしこのツアーの実態は、体験型観光とは名ばかりの、島の開発の手助けをするものなのである。どうりで会社名がたぬき開発に変更されている訳だ。無料奉仕どころか負債を背負わされ、謂わば強制労働を課せられるのだ。
 なんという恐ろしいゲームであろう。
 それはさておき、負けず嫌いで損をするのも嫌いな性格なので、とび森の時と同じく電話帳のように分厚い攻略本を購った。しかし、とび森の時ほど活用していない。困った時に調べるのだが、どうにも前の本より使いづらいのだ。行き詰まったところで調べるのは、主にインターネットである。今時はみんなそうだろうが、わたしは異様に紙の媒体に執着がある。
 如何にも現代らしい演出は、スマートフォンであれこれ済ますことだ。わたしなど、つい最近やっとSIMを手に入れたところなのに。
 で、アプリの中にたぬきマイレージ+というのがあり、これを開いたところの上の枠にある丸五つがどんなものなのかを、つい昨日まで知らなかった。なんとなく+キーを押してみたら、キャンペーン画面が現れたのである。なんでもやってみるものだが、マイルを受け取らないと更新されないようなので、かなり無駄にした。
 このたぬきマイレージはとび森のふるさとチケットのようなもので、あれより有効活用出来る。というか、これを貯めないと離島へ行けないのだ。ただし離島といっても、とび森の南の島のように大金が稼げる訳ではない。そこで獲れるものは住んでいる島と基本的に同じで、違う果物も滅多に生っていない。たまに化石が埋まっていることはある。
 博物館だか商店だかを建築するのに材料の提供を求められるのだが、木材三種は兎も角、鉄鉱石三十個なんてどうやって集めるのだ、と途方に暮れた。鉄鉱石が埋まっているのは岩の中で、その岩は一日ひとつしか現れない。一ヶ月仕事かよ。
 と思っていたのだが、これも間違っていた。
 島を彷徨い歩いている豆狸に、果物を食べると力が漲り、木を引っこ抜いたり岩を砕くことが出来ると聞いたので、素直にリンゴを喰ってから岩をしょぼい斧でぶっ叩いていたのだ。
 もう、大損こいてたよ。
 とび森の金が飛び出す石と同じように、上手くやれば八個の何かが出るのだ。何かというのは石、粘土、鉄鉱石、稀に金鉱石や現金。しかも、最後にぶち壊していいのは離島の場合のみで、島では大切に保管(?)した方が良策である。木材に関しても、三つ出ると知ったのは、間違えて二回叩いたらまだ転がり出たからだ。
 知らないと損をするとはこのことだが、ゲームの中なのでまだいい。現実の世界でこんなことがあったら、ショックで寝込むだろう。
 とび森との違いはまだあり、虫も魚も海の幸も種類が増えた。特に海の幸は、価格がかなり変更されている。とび森の場合、貝類の価格に納得出来なかったのだが、あつ森では高価格設定に変更されている。「憧れの高級食材だ」とか云って、とび森だと鮑はたったの四百円(ベルで考えていないので、円で通させていただく)なのだ。あつ森では二千円と、適正価格になっている。なので、素潜りを主にして稼ぐ。
 しかし、どちらのゲームでも理不尽だと思うのは、博物館への寄贈である。なかなか捕まえられない上に超高価格のものを、ナニ故ただで提供せねばならんのだ。せめてお礼の品でも寄越さんかい。シーラカンスも蘭鋳も、二度と釣れておらんぞ。
 しかしまあ、大ヒットしただけあって面白いゲームである。今のところ島民は操作する者を除いて五名居るのだが、難有いことにカツアゲ行為に走るどころか、親切にあれこれくれたりする。
 そう、とび森の気に喰わないところは、住民が犯罪すれすれのことを仕掛けてくることなのだ。昨日など、オロロン村のヒロぽん(凄い名前だが、元連合いの名前からつけた。別にシャブ中という訳ではない)を操作していて、贔屓のぺしみち(ニワトリ。名前が好きで可愛がっている)に頼まれたタイムカプセルを届けたら、なんとお礼に玉座をくれた。
 玉座は八十万円である。これまでも、アタゴオル村のえびる(昔のハンドルネーム)がカエルのサムから貰ったけれども、こんなことは滅多にない。吃驚して、それを懐に入れたまま(玉座を懐にってな)釣りをしたりしていたら、猫のビンタがキラーンとなって近づいてきた。
 何を要求してくるのだ、先刻釣り上げたドラドか?
 と思いきや、こともあろうに玉座をくれと吐かしやがった。しかもその対価として提出したのは、服。家具なら一応納得もいくが、価格の安い、四百円くらいの服である。夜中であったが、「はあ?」と声を上げてしまった。
 ありえんだろう。これはもう、犯罪級のおねだりだ。当然断ったが、ビンタは「え〜、こんないいものがいらないなんてぇ」と、捨て台詞を残し去っていった。たわけたことを吐かすな。ジャンボジェット機を軽自動車と交換してくれと云っているようなものではないか。
 子供の頃からファンシーなキャラクターが苦手で、特に猫を模したものが嫌いだった。何故ならば、猫のいいところを無視するか潰さんばかりの造形ばかりだからだ。いくら猫が無類に好きだといっても、子供騙しの絵には和みもしなければ容赦もしない。
 猫に関してだけは、リアル至上主義なのだ。

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