幸せの感じ方(創作)
まえがき
なぜか急に頭に構想が浮かんだので、まとめてみました。なぜだろう~。フィクションです!フィクション。短編小説。いや、形式的に無理があるか。経験がないからね、こういうのって。
そこ!「あっ、これは!」とか言わない!! 意味がわからない、という人はそのまま忘れてください。それで大丈夫です。
エース登場
「はい、蓮根です。
おお、ハスネコかあ。
電話をくれたってことは、来てくれることになったんだな。
うん、そうか。
それはよかった。
じゃあ、楽しみに待ってるよ。」
私はあるプロジェクトの責任者をやっている。我が社全体の業績を左右しかねない一大プロジェクトだ。多くのリソースを割り当ててプロジェクトにあたっているが、やはり人数ではなく優秀な人材こそが重要で、しかもリーダーシップのあるような人物でなければ大事な仕事を任せることはできない。
それで本社にエース級の人材を投入してもらえるよう、交渉を重ねていたのだ。その結果、投入が決まったのがハスネコこと、蓮根小五郎。私の大学時代からの親友だ。
私は蓮根四郎、ヤツは蓮根小五郎。同姓なのは偶然なのだが、周囲は呼び分けにくかったのか、私は「蓮根氏(ハスネシ)」、ヤツは「ハスネコ」と呼ばれるようになった。
大学卒業後は同じ会社に就職した。
ハスネコは社のエースとして様々な現場に投入されてきた。そのハスネコがプロジェクトにやって来るということは、今取り組んでいるプロジェクトが大事なものであると認められたと同時に「お前だけでは頼りない」と言われたようなものだ。
まあ、ヤツの投入を依頼したのは私なのだが。
ヤツは三日後にやって来た。すでにプロジェクトの概要や、我が社にとってこのプロジェクトがどんな意味があるのかは把握済み。具体的な問題点を私からレクチャーし、早速問題の現場へと向かってもらった。
一週間後、ヤツは大きな問題を取り除き、問題部分のリーダーである佐々木栄三郎と一緒に私のもとへとやって来た。
挨拶と一通りの報告を終え、佐々木は帰っていった。
「ご苦労様。助かったよ。
今回はなかなか厄介だったから、いくらお前でももう少し時間が掛かるかと思ってたさ。なんたって、エーさんが苦戦してたわけだから。」
エーさんこと、佐々木栄三郎は私達の先輩で、ハスネコほどではないにせよ、エース級として活躍した人だ。そして独立し、今は協力会社の経営者でもある。
「そうね。確かに難しいインシデントだったけど、一つ前のプロジェクトで採用した新しいソリューションがうまく適用できることがわかったのさ。
だから、一気に道筋はついた。あとはバリバリ仕事してもらうだけだな。」
それに、とハスネコは言葉を繋いだ。
「それに、個人的にはエーさんにいいヒントをもらったので、何としても力になりたかったんだよな。」
「なんだ、その『個人的には』っていう但し書きは。」
ハスネコは、「実は」と語りだした。
エースの秘密
ハスネコはエーさん個人的な話を聞いてもらったと言う。本人が言うには日頃のストレスもあって、家に帰ると奥さんについつい甘えてしまうのだが、いくらなんでも度が過ぎる、と奥さんに嫌がられているらしい。それで、長年同じ職種を続けているエーさんに悩みを打ち明けてみたそうだ。
別に離婚の危機とか、そういう話にはなっていないみたいなのだが、家庭を休まる場所にしておきたいんだというヤツの主張はもっともだと思った。
ただ、場所を変え、酒も入って具体的な話を聞いて飛び上がった。
「えっ!お前、奥さんにそんなことお願いしてるのか!」
ヤツは自分は匂いフェチだと言い出した。
それで、奥さんがトイレに入っている時に、一緒に入れてくれと頼んだそうだ。
それは奥さんも気持ち悪がるのもわかるぞと言ったのだが、ヤツはなんとか自分の気持ちを受け止めて欲しいと思っていたそうだ。
「その話をエーさんにしたの?!
なんて言ってた?」
エーさんはヤツにこう言ったそうだ。
「ハスネコさん、あなたは幸せだ。今はその幸せを噛み締めて、トイレに入れてもらうのは我慢したらどうだろう。」
元エース級の話
エーさんの話はこうだった。
エーさんも若い頃、奥さんのトイレのドアを開けようとしたことがあるそうだ。ただ、それは匂いフェチではなく、おふざけみたいなものだった。
それでも、相当奥さんには嫌がられ、つまらないことしてしまったと反省したそうだ。
それから20年ほどした頃、エーさんの奥さんにガンが見つかり、4年もたつと入院しての闘病生活を送ることになった。
点滴や酸素のチューブがあり、痛みも強い。トイレに行くのも一苦労だ。
入院した当初はトイレに連れて行くことを手伝って、エーさんはトイレの外で待っていたのだが、ある日、奥さんは意外なことを言ったそうだ。
「寂しいからここにいて」
エーさんは病気の進行を実感した。そして、若い頃にふざけてトイレに入ろうとしたことを思い出し、こんな形で実現するとは、と心の中で苦笑いしたそうだ。
「だから、」
トイレに入られることを嫌がる健全な状態の奥様を大事にしてあげてください。もし奥様が同意してくれたら、何か大変なことになってるとしか考えられない。そう思いませんか。
今日も断られた、あー良かった。で、いいではないですか、と。
「そんな話を聞いて、自分の悩みがちっぽけだったなと思ってさ。
他にもさあ、最近妻が配信アプリとかいうのを始めて、楽しそうにしてるのを見て嫉妬したりしてたんだけど、自分の大事な人が楽しそうにしているのに、それを邪魔するなんてだめだよな。
それに配信アプリだと仕事の合間にも歌声を聴いたりできるし、妻のもとに何人も人が集まってるのって、自慢できる話だよね。
集まってる男どもに『お前ら、いいだろ』って優越感に浸って楽しんでるよ、今は。」
楽しそうに話すハスネコは来た時より元気そうに見えた。
また、先に行かれたか。
あとがき
何も語りません。いろいろ思ったり、考えたりするのは勝手ですが、語り合わないでくださいね。
急に思いついたので、ヘッダー画像も用意できませんでした。
これ、怒られるかなー?こそっと上げておこうか。読んでもらいたいような、読んでもらいたくないような。
だから、そこ!語り合うなって!!
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