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どうすれば「あの動物病院は高い!」と言われずに顧客単価をあげられるのか?

日本人が最も苦手とする値上げ。今回はそんな普通の日本人である私がどのようにして顧客単価をあげることに成功したのかについて書いていきたいと思います。

値上げと値下げのインパクト

まずはじめに値上げと値下げのインパクトについて図を用いて説明したいと思います。今から説明する図を見ていただければ、明日から値上げをしたくなるはずです笑

例題

仮に上記のような損益表の動物病院があったとします。売上高10,000万円を分解して、顧客単価1万×10,000件としましょう。
そこで顧客単価を10%アップさせた場合と、顧客単価10%ダウンさせた場合の利益がどう変化するのかを見てみましょう。
今回は都合上、診察件数は変わらなかったと仮定し、原価と販管費も変化なしとします。

単価を10%アップした場合

単価を10%アップした場合、コストは大きく低下し、利益は2倍になります。

単価を10%ダウンした場合

単価を10%ダウンした場合、コストは上昇し、利益はなくなってしまいます。
これを見ていただくといかに単価のアップ、ダウンが利益に大きく影響するかがわかると思います。規模の経済が働かない個人動物病院では単価を下げることは病院の存続に関わるのです。
逆に単価をあげることで利益率を大きく改善させることができます。

1錠100円の薬を110円にするよりも10,000円の検査代を11,000円にする方がいい

経営戦略に迷っている方はぜひ以下の行動経済学の本を読んでみて下さい。めっちゃ面白いです。

  • 行動経済学が最強の学問である

  • 勘違いが人を動かす 教養としての行動経済学入門

この2冊を読んでみて下さい。明日から使える知識が手に入ります。

この本にも書いてあったのですが、人間はゼロに近いほど敏感に反応するそうです。これは時間、お金にも当てはまります。

例えば、今から10時間後に1万円が手に入りますと言われるとその10時間が長く感じるかもしれませんが、1年と10時間後に1万円が手に入りますと言われてもその10時間は誤差としか感じないはずです。
同じ10時間でも価値が違うのです。

お金の例として、100円の商品が110円に値上げされるのと10,000円の商品が10,010円に値上げされるのだと同じ10円ですが、後者の方が気にならないはずです。

つまりもともと高いもの(価値が高いもの)の方が値上げが受け入れられやすいのです。

というわけで1錠100円の薬を110円に値上げするのもいいですが、これまで10,000円とってた検査代を11,000円に値上げした方が意外に受け入れられるのです。

もちろんむやみやたらに値上げをするのはよくありません。しかし、ヒトの医療と異なり国民保険制度がない動物病院では利益をあげなければ、良い獣医療も提供できません。
我々獣医師が提供しているサービスを安売りするようなことはしない方がいいと思います。

値上げをするとサービスの価値も高まる

これは自分でも後から気付いたのですが、値上げをするとより一層サービスの価値を上げないといけないという無意識の心理が働くようです。

コスト増による値上げよりも価値向上による値上げの方が結果的に顧客にとっても、自分自身にとってもメリットがあります。

例えば、明日からエコー検査代を1,000円アップしてみるのも一つです。その場合、飼い主さんの前で説明しながらエコーをするのも一つですし、重要な画像をプリントして渡すのでもいいと思います。
そんな小さなことでもお互いにとってwinwinな関係であればいいのです。

値上げは告知するべきか?

結論からいうと、内服薬等の値段は一言伝えた方が印象は悪くないと思います。内服薬等は定期的に購入している方が多いと思いますので、ある程度皆さん金額を把握されているはずです。そのため、明らかに値段が上がっているのにも関わらず何も告知しないのは負のイメージにつながりかねません。

一方、エコー検査代、レントゲン代、処置代、手術代等は高級寿司屋さんのように時価要素が高いため、あえて告知する必要性はないと思います。
もちろん、これらの金額は決して安くないので、あらかじめ飼い主さんに伝えた方がいいのは言うまでもありませんが。

というわけで動物病院経営に悩んでいる方、ぜひ値上げをしてみて下さい!!いいことしかありません。

余談ですが、デービッド・アトキンソンさんの著書「給料の上げ方」でなるほどなと思ったのですが、給料が上がるかどうかは経営者の判断・行動次第なのです。
給料を上げようと思えば、来月の基本給を20万から25万に数字を書き換えるだけで上がります。ただ、実際にそんなことはほとんどないでしょう。
なぜか?
従業員として働いている皆さんが何も言わないからです。
「値上げしたら患者さんが減ってしまう」と心配する気持ちはわかりますが、何もしなくてもこの先患者さんは減っていく傾向にあります。そのような外部環境の中で、内部環境を変えない限り状況は改善しません。
成功は外部環境のおかげかもしれませんが、失敗は内部環境のせいなのです。



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