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モータートルク測定・改2

みなさんこんにちは!
今回は、モータートルク測定方法アップグレード版を紹介します。
例によって、パラメータ測定から電卓により算出という方法ですので、若干面倒でもいいよ!という方は、ご覧ください。


用意するもの

①モーター慣らし機

電圧を指定できて、モーター慣らし運転中に電流値を確認できる必要があります。自分は、よくある充電器の「サンダー(いわゆる106B+系)」を使っています。「ジーフォース ミニブレークインシステム」(電流を測定できない)などは使用できません。

②モーターの回転数を測定できるアプリ
Giriなど

③モーター負荷装置

小径ホイール+タミテ
モーターピンにタミテ直貼り

モーターに負荷をかけるための装置です。
上は、小径ホイールにタミヤテープをぐるりと巻いて、はみ出した部分で5ミリくらいのヒレをつけたものです。このホイールをモーターピンに装着して、ヒレの空気抵抗によって負荷をかけます。タミテはホイールをぐるりと1周して巻かないと回転の遠心力で剥がれてしまいます。
下は、長さ20ミリくらいのタミテの真ん中あたりをモーターピンに貼って、タミテの接着面同士をくっつけるように半分に折って、長さ10ミリくらいのヒレを作ったものです。貼ったり剥がしたりが面倒ですが、ホイールなしでも負荷をかけられます。
どちらでも好みの方を使ってください。
ちなみに、これ以上ヒレが大きいと空気抵抗も軸ブレも大きすぎて、電流値と振動が異常に大きくなって、モーターに過度な負担がかかります。

ちなみに、どちらもヒレを1枚にしていますが、これはあえて重心のブレを出すためです。
もし重心のブレが減ると、モーターの回転音が小さくなってしまい、ヒレによって起きる風の音で回転音がかき消されます。スマホアプリは回転音の周波数を計測して回転数を算出しているので、回転音がかき消されると、回転数計測が難しくなります。

④電卓またはExcel
手計算でもやれないことはないですが、ないとすごく面倒、あると便利です。

測定方法

③の式が2つありますが、どちらも結果は同じなので、好きな方を使ってください。エクセルなら上の式、電卓なら下の式がラクかなと思います。

はい、これでトルクが測定できました!

なんでこんなんでトルクが測定できるの?

モーターの特性(回転数とトルクの関係)は、次の式で表すことができます。

いくつものパラメータがありますが、これらひとつひとつの数値がわかれば、回転数やトルクを計算により求めることができます。
電圧は自分で決められます。無負荷時の電流値は、サンダーなどの器材があれば測定できます。
すると、あとは電気抵抗と逆起電力定数(=トルク定数)がわかればいいのですが、これは直接測定するのが困難です。
そこで、モーターを2つの運転条件(無負荷と負荷あり)で回転させ、それぞれの時の電流値と回転数の違いから、電気抵抗と逆起電力定数を逆算しました。
これで、式の中で定まっていないパラメータは回転数とトルクだけになりました。
あとは、起動トルクとは回転数ゼロのときのトルク値なので、回転数がゼロとしてトルクの数値を算出すれば、起動トルクがわかるという仕組みです。

おまけ

モーターの特性(回転数とトルクの関係)を表す式を活用すれば、エクセルでこんなグラフも描けます。

これは、あるモーターの慣らし時間がゼロ(赤)、3時間(青)、5時間(黄)のときのデータを測定し、グラフを描いたものです。電圧は1.0Vで慣らしました。
線が右上に位置しているほど高性能となるので、慣らしによって性能が向上していることがわかります。
このモーターは、回転数は2000rpmくらいしか伸びませんでしたが、トルクはおよそ1.8倍と劇的に向上しています。
慣らして回転数が伸びなくても、トルクはすごく上がっているかもしれないので、回転数だけでモーターの良し悪しを判断するのはやめた方が良さそうです。

まとめ

いかがだったでしょうか?
計算がメンドクサイのに目をつぶれば、特殊な器材なしでトルクが測定できます。
ぜひお試しください!

ご感想、ご意見、ご指摘、ここ間違ってるよ!などがあれば、お気軽にコメントにてお知らせください。

お読みいただき、ありがとうございました!

余談

[内部抵抗の影響を考慮すると?]
電池の内部抵抗による電圧降下の影響を考慮すると、モーター特性、無負荷回転数、起動トルクは次のとおりとなります。

これは、内部抵抗なしの式と比較すると、モーターに付加される電圧が電池の電圧に置き換わり、モーターの電気抵抗に電池の内部抵抗が加算されただけものとなっています。

[今回の記事の前提条件など]
無負荷回転時、モーターは外部にトルクを発揮していませんが、軸受の摩擦やローターの空気抵抗に打ち勝って回転するためにトルクを発生しています。抵抗に打ち勝つために消費されているトルクをトルク損失とします。

すると、無負荷回転時のトルク損失は、トルク定数と無負荷回転時の消費電流の積となるので、算出が可能です。

無負荷回転時以外のトルク損失は算出が困難なので、次の仮定により単純化を図ります。ローターの密度は空気に比べて十分に大きいので、空気抵抗の影響は無視します。そして、トルク損失としては軸受の摩擦のみを考慮するものとします。

摩擦力は回転数や速度に依存しないので、摩擦によるトルク損失は回転数によらず常に一定となります。したがって、トルク損失の値は、常に無負荷回転時のトルク損失の値であるとみなしました。



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