見出し画像

【将棋】大住囲い(おおすみがこい)・金立美濃 (2021.1.20追記)

2021.1.20 「金立美濃」に関して下の方に追記

こんにちは。
今回は将棋の話です。

皆さんは好きな囲いはありますか?

振り飛車の囲いだけでも「美濃囲い」、「片美濃囲い」、「高美濃囲い」、「銀冠」、「木村美濃」、「穴熊」、「金無双」などなど様々な囲いがあります。

※私は振り飛車党なので振り飛車視点の話が多くなります

美濃囲いの系統が最も指されていると思いますが、最近は振り飛車「ミレニアム」や「elmo囲い」の振り飛車ver.などもでてきて多様化していますね。

さて、皆さんは↓この囲いをなんて呼んでいますか?

画像1

おそらくすぐ名前が出てこなかったと思います。


とあるニコニコ動画の将棋実況者さんはこの囲いを「金無双」と呼んでいました。
https://www.nicovideo.jp/watch/sm36105329

確かに部分的には金無双と同じ玉と金の位置関係になっています。

しかし、『金……無双?』、『金一枚でも金無双なの?』とコメントがあったように金無双そのものとは異なります。
それに、金無双とも区別したいですよね。

私が調べた限り、この囲いには「三手囲い」という呼び名がありました↓。
http://www5e.biglobe.ne.jp/~siratama/nonframe/syougi/furibisya/santegakoi.html
玉を4八、3八と2手移動して金をまっすぐ上がる、合計3手で組めることから付いた名前ですね。

しかしながら「三手囲い」というと↓こちらの囲いも同じ名称で呼ばれることがあります。
http://www5e.biglobe.ne.jp/~siratama/nonframe/syougi/furibisya/hayagakoi.html

これでは混同してしまうので区別したいですよね。


そんな折り、↓このようなコメントがありました。

『囲いの名前で議論があるので新しい名前を提唱します』
『まずこの金の優雅な形を「金の背もたれ」と名付けます』
『そして動画のような陣形の囲いを、金の背もたれの名を活かして、こう名付けます』
『大いに住みやすい金の背もたれ』
『略しておおすみ囲い』

これに対して
『略称に金の背もたれ入ってへんやん』、『大隅囲いでいこう』などなどあって「大住囲い」、「大隅囲い」の名前が誕生しました。

その後、一部界隈で「大隅囲いさんだ!」とコメントが付くようになりました。笑

画像2

自分の動画の露骨な宣伝

名前が付くというのはそれだけでメリットがあります。
「▲3八玉▲4八金型(△7二玉△6二金型)」と符号で言及すると、説明する方もされる方も(@_@)???と余計な労力がかかりますが、「大住囲い」と言うだけで共有できれば「符号を介して考える」労力を省くことができます。

今はまだ「大住囲い」と聞いても( ゚д゚)ポカーン???の人が大多数なので、もっと広めていく必要があります。

メリットは他にも考えられます。

名前を付けたことで「それ」に対して追究しようと企図され、研究がより深められます。

Wikipediaで記事を作成してくれた方がいるので是非こちらもご覧ください。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A7%E4%BD%8F%E5%9B%B2%E3%81%84

当該記事では美濃囲いと比較した長所について言及したり、コンピュータ将棋隆盛と関連させて「バランス重視の陣形が見直されるようになった」ことで注目されているなどの考察をされています。
当然ながらこの形自体は古くから指されていて、どうやら天野宗歩の棋譜にもでてくるんだとか。

どうでしょうか。
「名前が付いたこと」によって研究が深められ、このような取りまとめが為され、共有されやすくなっていますよね。
(プロ棋士の方や強豪の方は名前つけなくても研究してそう(^^;)とか思ったりもしますが、このような辞典の形での共有はされにくいですよね)

そして今年4月には大橋先生の「耀龍四間飛車」が刊行されました。
この本では一番最初の戦法の概要図で「大住囲い」の形が示されているくらい、極めて高い頻度で「大住囲い」を経由した組み替えが行われています。

耀龍四間飛車

大住囲い

耀龍四間飛車はプロの棋戦でも採用されるようになってきており
・竜王戦1組決勝 佐藤和七段-羽生九段
・AbemaTVトーナメント 谷川九段-都成六段
・竜王戦3組決勝 藤井七段-杉本八段
で登場しています。

これだけ有力視されて流行しつつあるのに大盤解説などで毎回「▲3八玉▲4八金型(△7二玉△6二金型)」と話されていたら…(以下略)(o_ _)o パタッ
ということで、呼び名には需要があると思います。

棋譜コメントで「金無双風の囲い」と書かれているものも最近見ました。
おそらく呼び方に困って工夫したのだと推測します。

これからもっと指されるようになれば、この囲いをなんて呼んだらいいかわからないのは切実な問題になると思います。

耀龍四間飛車が流行しそうな今だからこそ、「大住囲い」を定着させられるように私も微力ながらこのnote記事を書いてみました。

皆さんもぜひ、この囲いの呼び方に困っている人を見かけたら「大住囲いさんだ!」と言ってあげましょう。


(以下 2021.1.20 追記)

2020年12月24日発行の「マイナビムック将棋世界Special 将棋囲い辞典100+」にてこの囲いが「金立美濃」の名前で取り上げられていました。この名称は初出のようです。関係部分を引用しながら紹介します。

金立美濃という囲い名は聞いたことはあるだろうか。ない?それはそうだろう。だって今ここで名付けたのだから。大隅囲い(大住囲い)の名もある。「耀龍四間飛車」の名で最近注目を集めている形のオープニングで用いられる形だ。 (戦形別囲いランキング 振り飛車の囲い21 p33より)

ここだけ読むと、「いや、名前あるならなんで『今ここで名付けた』の!」とツッコミたくなりますが、別のページで説明がありました。

大隅囲いという名があるが、名前から囲いをイメージしにくいので、本書では金立美濃と呼ばせていただく。 (最新囲いエトセトラ p162より)

『大隅囲い』の名前で囲いの形をイメージしにくいのは同意見です。
しかし、「『美濃』要素どこ?」「そもそも『美濃』って何?」と疑問が湧くので「金立美濃」でも問題は解決していないと思うのですが…。
同じページで下記の記述もありました。

金立囲いはここから居飛車の作戦に応じて囲いが進化していく。 (最新囲いエトセトラ p162より)

いやさっきまで『金立美濃』って言ってたやん!
なんで『金立囲い』になってるの!
でもむしろそっちの方がよくね?!
…とツッコミが追いついたところで、紹介を終わります。


私の立場は「名前があれば何でもいい」です。
金立美濃の記事を書かれた方も「名前があった方がいい」という考えは共通していると思います。

その上で、個人的な好みは
大住囲い>金立囲い>>三手囲い>金立美濃>大隅囲い
です。

意味が通って、他の囲いとの区別がつくのが好きですね。

大住:大いに住みやすい
自分が良く指す形なので、だんだんと「端から遠い・角筋に入らない・戦いながらリフォームできる」といった特徴が名前に表れているような気がしてきました。

金立:金が立つ
『美濃』はともかく、『金立』はわかりやすいのでむしろ『金立囲い』ならいいのでは?と思いました。

それにしても「大隅囲い」が「大住囲い」と同程度に浸透しているのは謎ですね。言葉が変化して「同音で別の漢字に書き替えられる」ことはあると思いますが、それが極めて早い段階で起こった例ですね。

ということで、どれか定着するといいですね!

(追記終わり)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?