見出し画像

巡禮セレクション 14

2014年03月29日(土)

生と死の女神2 白山姫神

まだ白山姫については、うまく纏められませんが、不完全ながらも一度記録しておきます。

昔、七色堂で白について書いたことがあります。

「死の色といえば、黒が思い浮かばれるが、そもそも白とは、冥府の色でもあるそうだ。
白は、発色する以前の色ととらえ、この世に生まれる前の色ということらしい。
よって、あの世に帰るには、白の世界に帰るということなのだろう。
そして、白(シラ)は産の色でもある。
あの世から、この世に誕生する色でもある。

三河の霜月神楽に「白山」というものがあり、
シラヤマという、擬似冥界(黄泉の国)をつくり、そこに入り、再びそこから出てくるとき、赤ん坊(神の子)が生まれるという。死と誕生というキリスト教の奥義である死と復活を彷彿させるものがそこには見られる。」

白というのは、あの世を意味し、そこから命が生まれ、そこへ命が去っていきます。

白山をハクサンと読まずにシラヤマと読むと、これは被差別民の信仰としての過去があるそうです。

ところで、白山信仰の総社、白山比咩神社の由緒では、
「717年(養老元年)修験者泰澄が加賀国白山の主峰、御前峰に登って瞑想していた時に、緑碧池から十一面観音の垂迹である九頭龍王が出現して、自らを伊弉冊尊の化身で白山明神・妙理大菩薩と名乗って顕現したのが起源で、併せて白山修験場開創の由来と伝わる。」
とあります。

現在、白山比咩神は、白山菊理姫となっていますが、最初この白山姫神とは、十一面観音であり、九頭龍王であり、伊弉冊尊だということです。
これを白山妙理権現と呼んでいます。
一方、菊理媛神は聖観音菩薩の垂迹であり、大行事権現と呼ばれておりました。
明らかに、この二神は異神であるのですが、おそらく両者とも黄泉の神であるがためにいつからか同一視されたように思います。


黄泉の神というと、イタコの信仰する神にオシラ様という神がいます。イタコとは、言わずと知れたあの世の人の言葉を語る人です。あの世と交信する人です。
シラヤマ姫とオシラサマは、同神の可能性があるようです。
イタコは、「お大事」という筒を肩から提げているようです。昔は竹でできていたようです。
この「お大事」の中には、白山姫命と書かれた紙が入っているそうです。

筒というと、管狐を思い出します。
○○○さんの言うように、ダキニとも関連しているように思います。

「傀儡子は、夜になると百神を祭ってお祭り騒ぎをする。百神は『遊女記』に現れる百大夫と同じものであろう。それは道祖神と同じもの・・・」
とあります。
この百神は、白神だという説があります。

百神と同神だと考えられる傀儡子の信仰する百太夫という神がいます。
これと似た、白太夫というのがいて、北野天満宮の末社に白太夫社というのがあります。

「北野天満宮の第一の末社に白太夫(しらだゆう)があるが、字が似ていることや「はくだゆう」と読むと「ひゃくだゆう」に音が似ていることから百太夫と混同されることが多い。白太夫は各地の天満宮に祀られる。一説には、菅原道真の従者であった外宮祀官・渡会春彦を祀るという。」

傀儡子に関係深い、安曇氏の祖神と言われる安曇磯良を由来とする磯良舞というのがあります。以下某サイトより抜粋。
「宇佐神宮には細男舞という放生会のクグツ舞が伝承されている。・・・・・・(中略)
ところが宇佐神宮の境内には百体社というのがあり、ここは安曇の磯良[いそら]を祭神としており、
磯良は[しら]と読み、白太夫社ともいった。細男とは太平記などに出ている、安曇の磯良が海中から現れて舞ったという、青農、才男であり、海底から出てきた海の精霊が祝福していることをあらわす。安曇の磯良は安曇氏の祖神である。この磯良舞を全国に広めたのはクグツ族である。クグツ族の中心になったのは大阪西宮神社にある百太夫社であるが、西宮神社は恵比寿神を祭っている。恵比寿神は海の彼方からやってきた日神であり、日子であり、ヒルコである。」

「白の民俗学へ」の前田速夫氏によると、
西日本では、白山信仰が少なく、シラヤマ神は、エビス神になったのではないか・・・と提起しています。

恵比寿さんというと、白髭明神に似ています。
良弁の前に現れた白髭明神は、釣り人の翁でした。
(お水送りの遠敷明神にも似ていますね)
白髭明神とは、比良明神であり猿田彦命だとされています。
黄泉比良坂と同じ比良の字を持つ山の神であり、道祖神ともされる猿田彦命は、比良夫貝に挟まれて死にます。
僕は、比良とは、境の意味があるのではないか・・・と考えています。

傀儡子の信仰する百神は道祖神ですから、猿田彦でもあるのかもしれませんし、ウズメでもあるのかもしれません。
なぜなら、傀儡子や白拍子など女性芸能の祖は、アメノウズメとされているからです。


もうひとつ、白の付く神に天白神という信仰があります。
「天白信仰(てんぱくしんこう)は、本州のほぼ東半分にみられる民間信仰である。その分布は長野県・静岡県を中心とし、三重県の南勢・志摩地方を南限、岩手県を北限として広がっている。

信仰の対象・内容が星神・水神・安産祈願など多岐にわたることから様々な研究・解釈が行なわれたが、1980年ころから伊勢土着の麻積氏の祖神天白羽神(あめのしらはのかみ、長白羽神の別名)に起源を求める説が紹介されることが多くなった。」

伊勢湾地方と関係が深そうですが、伊勢というと、
「白太夫は各地の天満宮に祀られる。一説には、菅原道真の従者であった外宮祀官・渡会春彦を祀るという。」
とのつながりがあるのかどうか気になるところです。

また、天白信仰は、役小角が九頭龍を封じ込めた伝承のある戸隠山が信仰の発祥地らしい・・・「白の民俗学へ」に記述されていました。
戸隠山といえば、天岩戸の聖地です。

どうもウズメからのナガレが続いています。
そして、冒頭に書いた霜月神楽の三河地方では、天白神社の祭神は瀬織津姫を祀ることが多いようです。

因みに白(シラ)の本源を、
柳田國男の言うような「稲」「稲積」と見る見方と、言語学者村山七郎氏の言うような「光線」「輝くもの」「太陽」と見る見方があると吉本隆明氏は導いています。


僕の中では、生と死の女神として、
白山姫ことイザナミ(伊邪那美神は熊野夫須美大神でもあります。)
アメノウズメ。
そして、これらと関係深いサルタヒコにエビス(ヒルコ)が一直線に繋がっているように思えています。

もう少し、この生と死の女神を追ってみたいと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?