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巡禮セレクション 39

2014年05月16日(金)

華麗なる一族 


先に白状しておくと、ここ数日、天背男を再び追っていました。
この名前、覚えておられるでしょうか?
「香香背男は、天背男なのか?」または、
「ひとつのパターンから」で記述してきた神です。

その項では、天背男命=賀茂建角身命
ということを導き出しています。
そして、天背男命は、星神、天香香背男と同一だと見られることも少なくないようです。

と、前回ここまで見て、しばらく忘れていました。
しかし、このセオさん、最近また目にすることになったのです。

それは、伊勢外宮の度会氏の祖先は天日別ですが、この天日別は、別名天日鷲と一説にあります。
そして、天日鷲の父が天背男です。

因みに天背男の父は、天底立と言います。
天底立、別名天之常立神です。
「古事記』では、八百万神に先駆け、天之御中主神、高御産巣日神、神産巣日神の 造化三神の次に宇摩志阿斯訶備比古遅神が生まれ、次に生まれた天之常立神を加えて、別天神という。」
かなりの大物です。

その息子が天背男です。
天背男の子供達がまた凄いです。

息子に、
天日鷲(大麻比古の父、阿波忌部の祖先)
櫛明玉(出雲玉造の祖神)
娘に、
許登能麻遅媛<ことのまぢひめのかみ>
天比理乃咩(天太玉の后)
天津羽羽(事代主命の后)
天方栲幡千幡姫(天児屋根命の后)

系図や伝承は時々、矛盾がありますが天背男の子達はこうあります。


今回、注目したいのは、天津羽羽命(アマツハハノミコト)です。
天背男の娘なので女神です。
でも、他の娘の名のように姫の名がついていません。

静岡県神津島の伝承では、三島大神(事代主命)の本后となっています。

土佐朝倉神社の御祭神でもあります。
ここの由緒では、
「御祭神
天津羽々神(別名 天石帆別神 天石門別神の子)
合祀 天豊財重日足姫天皇(斎明天皇)

味鋤高彦根命 『朝倉宮縁起』
天御梶日女神(味鋤高彦根命の后神であり、天津羽々神と同一) 『皆山集』
(亦名 阿波咩命、阿波々神、阿波神)」

とあります。


ここでは、別名を天石帆別神(あまのいはほわけ)とあります。
似た名前の神、天穂押別(あまのいわほおしわけ)は、度会氏の系図では、天手力男命となっているそうです。

天津羽々神は、天石門別神の子となっていますが、天石門別神は、
『古事記』の天孫降臨の段に邇邇芸命が天降る際、三種の神器に常世思金神・天力男神・天石門別神を添えたと記されていますから、天力男神と非常に近しい関係にあると言えます。

だから、充分に天津羽々神=天力男神はあり得ます。
しかし、こうなると天津羽々神は男神になってしまいます。
だから、娘といいながら姫の字がついてなかったのでしょうか?

それと、前回見た、八倉姫神社の前に天石門別を冠していることも気になります。

八倉姫と天石門別は夫婦でしょうか?
そして、その子が天津羽々神になるのでしょうか?

そうなると天津羽々の父は、天背男ですから、
天石門別=天背男になりましょうか・・・


さらに、
「天津羽羽命について更に調べてみます。

岩穂押開子が祭神である神社に、気吹雷響雷吉野大国栖御魂神社があります。
『大略注解』によると、気吹雷響雷吉野大国栖御魂神には以下の伝があります。

波多郷稲淵山山上 古老口談云、気吹雷響雷神者気吹戸神也、其水吹出神謂之気吹雷神也、其気戸水神謂之鳴水雷神也、或曰、吉野大国栖御魂神者磐穂押別神之子也、元社在吉野郡国栖村、故云吉野大国栖御魂神、奉遷座此所未考其由矣。

気吹雷響雷吉野大国栖御魂神とは気吹戸主であり磐穂押別神之子でもあるようです。

神宮の『倭姫命世記』には、「多賀宮一座、豊受荒魂なり、伊弉那伎神の所生神、
名は気吹戸主、またの名は神直毘大直毘神といふ」

とあります。つまり磐穂押別神之子は、神直毘大直毘神または豊受大神荒魂でもあるということです。

天津羽羽命が神宮外宮多賀の宮の神であるということが導かれます。」

天津羽羽=天石帆別で、
天石帆別=天穂押別と仮定し、
天穂押別=磐穂押別とするなら、
磐穂押別神之子が気吹戸主ですから、
天津羽羽の子が気吹戸主になりますね。

上記の筆者は天津羽羽命=気吹戸主と書かれていますが、間違いでしょう。
しかし、親子の間とか同一とか系図のことは時々混乱します。
はっきりいえるのは、同じ系列にあるということです。


大事なのは、ここで気吹戸主の名が出てくること。
『倭姫命世記』とは、偽書説もありますが、度会氏の伊勢神道の教典です。
渡会氏は、伊勢外宮の社家です。
そこには、伊勢外宮の多賀宮には、豊受大神の荒魂であり神直毘大直毘神である気吹戸主が祀られていると述べていることです。

伊勢内宮荒祭宮には、天照大御神の荒魂、瀬織津姫が祀られていると言われています。

これが対神になるのは、わかると思います。
伊勢内宮:天照大御神荒魂=瀬織津姫=八十禍津日神
伊勢外宮:豊受大神荒魂=気吹戸主=神直毘大直毘神

瀬織津姫の対神はニギハヤヒではなく、気吹戸主こそ相応しいと僕は思っています。

前回、大宜都比売命=八倉比売命=天照大神と書きましたが、これに瀬織津姫も関係していると思います。

親子関係ははっきりしませんが、
天背男
天津羽羽(阿波神)
天岩戸別
八倉姫(大宜都比売)
気吹戸主
瀬織津姫
これらの神々は血族だということがわかります。

伝承からいくとこれらの華麗なる一族の父は天背男ということになりそうです。

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