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巡禮セレクション 19

2014年04月29日(火)

西王母 



最近読んでいる本は、その時その時に興味を惹かれた本をネットの古本で購入し、本棚に仕舞い込んでいたものを、気が向くままに手にとって紐解いているものです。
買って数年たってから読み始める本も少なくないです。
ここの日記の参考にしてきた白神、女性芸能、太陽信仰蛇信仰、三星堆文明・・・などなど、読んでいる時はそのつながりが感じないものの、読了後は、やはりどこか繋がっているのだと感心してしまいます。

前回の日記の最後に名前を出した西王母も、
昔から知っている女神ではありますが、ここにきて、西王母に繋がるのか・・・と少々驚きを感じてしまいます。
今回は、その西王母をテーマに書いていきます。

西王母は中国で最も有名な女神様です。
こちらのサイトがわかりやすく説明しているので抜粋させていただきます。

「昔、仙境といわれていた場所は二つありました。東の蓬莱山、そして西の崑崙山(こんろんさん)です。そしてこの二つの山には不老不死の薬があると古くから言い伝えられていました。そしてその崑崙山の主人が王母娘娘(ワンムーニャンニャン)なのです。西の王母だから西王母というわけです。
 彼女は玉皇大帝(ぎょっこうたいてい)という道教の最高位の神様の奥さんでもあり、女神の中では最高位の神様で、長寿の神様です。道教の世界では「九霊太妙亀山金母(きゅうれいたいみょうきさんきんぼ?)」「太虚九光亀台金母元君(たいこきゅうこうきだいきんぼげんくん?)」と呼ばれています。

 かつては疫病や刑罰をつかさどる神様だったようですが、周から漢の時代にかけて不老不死の薬(霊丹妙薬(れいたんみょうやく))や桃(蟠桃(はんとう))を有する、長寿の神様と変化しました。

 また、彼女は多くの伝説に名前を残していています。漢の武帝が天界で桃を賜った話、嫦娥が盗んだのは西王母の不老不死の薬でした。また西遊記のなかで孫悟空は西王母の桃を盗みます。……などなど数えれば切りがありません。それだけ人気のある神様だというわけです。

 西王母を描いた絵にはたいてい桃が描かれています。侍女が桃をささげ持っている図も多く見られますが、西王母の桃とはどんなものなのでしょうか。

 古来中国では、桃は魔よけの力があるといわれ、仙人の杖に使われたり、お札に使われたりしてきましたが、崑崙山には王母桃または蟠桃といわれる桃があるといわれています。この桃が不老長寿の桃なのです。この桃はとても小さく、銃の玉ほどの大きさしかないといいます。そして3000年に一度しか実がならないのだそうです。西王母がこの桃が実ったのをお祝いして「蟠桃宴」を開きます。この宴に呼ばれるのは超一流の神様仏様たちだといいます。ちなみに、孫悟空はその宴に乱入に大暴れをしました。

 このように西王母は長寿の神様としてとても親しまれている神様です。そうそう、西王母のお誕生日は、三月三日だということです。」
以上抜粋終わり

「不老不死の力を与える神女」というイメージですが、元々は、そうではありません。

「本来の姿は「天厲五残(疫病と五種類の刑罰)」を司る鬼神であり、『山海経』の西山経及び大荒西経によると、
「人のすがたで豹の尾、虎の歯で、よく唸る。蓬髪(乱れた髪)に玉勝(宝玉の頭飾)をのせていて、穴に住む。」
という、半人半獣の姿である。
また、三羽の鳥が西王母のために食事を運んでくるともいい(『海内北経』)、これらの鳥の名は大鶩、小鶩、青鳥であるという(『大荒西経』)。」(ウィキより抜粋)


後漢時代中期頃、もともと両性具有であった原西王母は、対の男神である東王公と女神、西王母に分裂し、この対神は冥界の支配者の性格を強くしていったそうです。
西王母も冥界の女神であり、命を司る女神なのです。
今まで、記述してきた白神と同じ性格を持ちます。

そして元々男女の区別のない一神だったというのも興味深いです。
僕がエジプトの天空神と地母神であるヌトとゲブ。
それに重ね合わせて僕が妄想しているアメノウズメとサルタヒコを連想してしまいます。


崑崙山の洞窟に住む西王母は、天の岩戸も連想してしまいます。
それから、西王母は、「勝」という髪飾りをしているのが特徴なのですが、この「勝」とは、糸を巻きつける道具だったようです。
西王母は、養蚕紡績に深い関係を持っているのでした。

小南一郎氏の研究によると『淮南子』の記述より、
「宇宙の秩序が天上の女神西王母の機織によって保たれており、「勝」が折れたりして機織が止まるとき、宇宙は原始のカオスの状態に戻る」
と考察されています。

西王母は機織神であり宇宙の秩序を守る神でありました。

西王母には、いくつかの眷属がいます。
九尾の狐、蟇蛙、玉兎、三青鳥などです。

なんだか僕達の巡礼に関わるキーだと思いませんか?
西王母は、西老とも呼ばれ重要なアイテムとして殷周王朝の中原では珍しい杖を持っています。

杖を持つ老婆はサルダヒコの原型とも考えられるサダル神に通じますし、蛙はサルタヒコの使いです。

冥界の髪をふりみだした老婆は奪衣婆を思い出します。

九尾は稲荷さんを連想しますし、
兎や鳥も注目してきました。


半獣半人の天上の女神、西王母ですが、
実際出会った王がいます。
周の第五代王である穆王(ぼくおう)です。
この経緯は、『穆天子伝』に書かれています。
穆王は、崑崙山へ出向き西王母と出会い宴を開き楽しい一時を過しました。
西王母も穆王に歌を送ったと書かれています。

ここに描かれている西王母は神ではなく高貴な女性です。
徐氏は、様々な検討により西王母は三星堆文明の古蜀国の女王ではないか・・・と結論付けています。

古代蜀国の開祖で初代の王は、蚕叢(さんそう)といい養蚕を始めたとされる半神半人の人物でした。
徐氏は、西王母と蚕叢が同一人物もしくは、深い関係があると考えているようです。


神か人か?
これは日本において姫神を考える上でもよく議論の対象になります。
瀬織津姫もしかりです。
僕は瀬織津姫は自然神だと考えていますが、人格神であるとの考えも根強いと思います。
だから、姫を人間の女性の姿で信仰されている人も多いと思います。
また、是非は知りませんが姫の生まれ変わりに言及される方もいるようです。

神であり人である場合二つのパターンが考えられます。

生前人であったのが死後、神として祀られる場合。
ある氏族の族長が死後、山や古墳に祀られ氏族の守護神となる場合があります。それが氏神です。
しかし、縄文の女神と呼ばれる瀬織津姫の時代、いわゆる自然神信仰の縄文時代にそういった信仰があったかはわかりません。(先祖霊供養はあったと思いますが)
弥生時代か古墳時代以降のような気がしますが、勉強不足で自信ありません。

他方、神が人になった場合。
巫女は、神と神婚し一生その神に遣います。
巫女は、その死後、夫神と同一と考えられ神の名を持って祀られたと聞きます。
男神が女神に変わる原因でもあるようです。
三輪神もそうだったのかもしれません。

そうであれば、神の名を持つ巫女の前世を持つ人がいても不思議はないと思います。
そして後にその女神に様々な性格が付与された可能性はあるように思います。

変な喩ですが、
大天使ミカエルの名を持つマイケル・ジョーダンがバスケの神になったのと似ているかも・・・いや、これは違うか(笑)

とにかく、女神西王母は、人として生活していたと記録されています。
西王母は、西王の母です。
これを西王の姫とするなら、せいおう津姫になります。
津は水の意味がありますが、「~の」という意味もあります。
そして織姫ですから、まさか・・・という気もします。

西王母を中国読みするなら、「シーワンムー」と読むようです・
西王がシーワンです。
シーワンの女王とするなら、シバの女王を連想します。
シバの女王の統治期間は、紀元前10世紀と考えられています。
西王母と出会った穆王の在位期間は前985年? - 前940年だそうです。
時期的に一致する可能性があります。

原本を読んでいないのでわかりませんが、
「新約聖書では「地の果て」からやって来た南の女王(Queen of the South)と表現される。」そうです。

シバの女王の国はこのため、イスラエルの南方のイエメンやエチオピアとされていますが、
この地の果てとは、東西に長いユーラシア大陸に置いては、西の果てもしくは、東の果てになるのではないか・・・これは太陽の動きにも対応していると思います。

そして、南の女王とは、イスラエルから見ての南ではなく、「南の女王」という既に別称を持っていたのではないか・・・
これは、中原に対して中国南方の女王、即ち蜀の女王を意味していたのではなか・・・とも考えられます。

といっても、これは少し強引かもしれません。
僕もそう信じているわけではありません。

ただ、シバという名はシヴァ神を連想させ、
シバ神とはヒンズー教の破壊神。
「ヴェーダ神話に登場する暴風雨神ルドラを前身とし、『リグ・ヴェーダ』では、「シヴァ」はルドラの別名として現われている。暴風雨は、破壊的な風水害ももたらすが、同時に土地に水をもたらして植物を育てるという二面性がある。」

「シヴァ神の乗物はナンディンと呼ばれる牛で、ナンディンも神として崇拝されている。通常、シヴァの寺院の前にはナンディンが祭られている。」

「シヴァの妻はパールヴァティーで、その間の子供がガネーシャ(歓喜天)である。」

「頭頂部からは小さな噴水の様に水が吹き出しており、絵画で描かれる場合には頭髪の中ではガンガー女神が口から水を噴出しているものも多い。これはヒマラヤ山脈におけるガンジス川の始まりの水を示す。また、首を持ち上げたコブラとともに描かれる。」

妻のパールヴァティーは、山の女神。
その妹でシヴァの頭髪の中にいるガンガーはガンジス川の川神です。

「片手に先が3つに分かれた「トリシューラ」と呼ばれる鉾を持っている。」のですが、三叉の鉾も意味があると思います。

西王母1

また、以前から気になっていたのは、
「ナタラージャ(踊りの王)とも呼ばれ、丸い炎の中で片足をあげて踊っている姿の彫像で描かれる。」
この片足を上げて踊る姿は、蔵王権現をそっくりです。

西王母2

西王母3

蔵王権現もまた、強力な神です。
そしてこの神を信仰する山岳信仰、修験道は白神信仰だとも言えます。

蔵王権現の聖地、吉野は、桜の名所。
それゆえ滋賀県には、瀬織津姫を祀る吉野神社はサグナダリの訛り桜谷からの連想からその名付けられています。
修験道では瀧神信仰が必須だと思いますから、深いつながりもあると思います。


いろいろ取り留めなく彷徨うのですが、やはり神々というのは繋がっているように思うのです。

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