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非情怪談 毎週ショートショートnote



非情怪談   【410字】

俯いて階段を降りてくる男。眉間に皺を寄せたその顔をじっと見る。
クソ真面目なヤツだ。
階段を上がる男は憎々しい顔をしている。前方を見上げる目には希望が見える。
こいつもいつもの顔。階段を使うメンツは決まっていてつまらない。

エスカレーターの隣の階段はその幅、占有面積の割に有効活用されていない。誰もがエスカレーターの列に並ぶ。
一方は立ち止まり、もう片方を空けて階段として使っている。何度注意しようと立ち止まろうとしない。
「エスカレーターで歩くヤツは階段を使え」
もう何度もそう注意喚起しているが、一向に改める気配はない。
まぁいい。そのうち俺の堪忍袋も限界が来ることを知るがいい。


ある日、エスカレーターを駆け上がった男の足元の一段をフッと消してやった。
男の足は空を切り、したたか脛を打ち、さらに下へと転がった。それに続く列も次々と薙ぎ倒され、エスカレーターの上り口に折り重なって倒れた。
さて、死者は何人だ?ゆっくり勘定するとしよう。
      了


たらはかに さま
よろしくお願いいたします


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