マガジンのカバー画像

2021年映画感想

43
運営しているクリエイター

#映画鑑賞

映画『ラストナイト・イン・ソーホー』感想 60年代への憧れと贖罪

 2021年の感想書き、ラストになります。映画『ラストナイト・イン・ソーホー』感想です。  『ベイビー・ドライバー』で知られるエドガー・ライトの最新監督作品。『ベイビー・ドライバー』では、劇中での音楽の使い方が半端じゃないセンスだったのが印象的でしたが、今作でもそのDJ的な音楽センスが爆発しています。本当にこの監督は、映像に音楽を重ねるのが上手いですね。  ジャンルとしてはド直球のホラー。けれども、サスペンス要素としての犯人探しもあるので、至る所にミスリードが仕掛けられて

映画『パーフェクト・ケア』感想 「完全超悪」映画

 面白さは超一流、だけど手放しでは楽しめない。映画『パーフェクト・ケア』感想です。  高齢者の成年後見人を務めるマーラ・グレイソン(ロザムンド・パイク)は、多くの老人の後見人として完璧なケアを行っており、裁判官からも信望の厚い女性。だが、マーラのケアの実態は、医師や高齢者施設と結託して、まだ自活出来る健康な老人を偽の診断書で施設に閉じ込め、その資産を管理する名目で横領するというものだった。  マーラは、ジェニファー・ピーターソン(ダイアン・ウィースト)という身寄りのない老婦

映画『マリグナント 狂暴な悪夢』感想 元気がもらえる、カンフル剤ホラー

 おちこんだりもしたけれど、(たくさん人が滅多刺しにされるシーン観たから)わたしはげんきです。映画『マリグナント 狂暴な悪夢』感想です。  妊娠中のマディソン(アナベル・ウォーリス)は、幸せな状態とはとても言えず、夫のデレク(ジェイク・アベル)のDV行為により不安な日々を送っている。ある日、デレクと口論になり、突き飛ばされたマディソンは後頭部を壁に打ち付けて出血してしまう。その深夜、家に侵入してきた何者かの手によって、デレクは無惨に殺され、マディソンもその何者かに襲われて気

映画『かそけきサンカヨウ』感想 変化する過渡期の美しさ

 眩しいくらいの清廉潔白さ。映画『かそけきサンカヨウ』感想です。  高校生になる国木田陽(志田彩良)は、幼い頃に母親が出て行き、父親の直(井浦新)と2人暮らしで、家事全般を陽がこなしていた。ある夜、陽は直から、結婚したい人がいると告げられる。2人での暮らしは終わり、再婚相手の美子(菊池亜希子)と連れ子のひなたとの4人生活が始まるが、陽は新しい暮らしと家族に戸惑いを隠せない。陽は、同じ美術部で幼馴染の清原陸(鈴鹿央士)にその戸惑いを打ち明けながら、少しずつ今の家族を受け入れて

映画『アンテベラム』感想 差別は恐怖からやって来る

 何書いてもネタバレになるところを、あえてネタバレなしでチャレンジ。映画『アンテベラム』感想です。  南北戦争下と思しきアメリカの、南軍の旗が掲げられた綿花農場。そこでは軍属の白人やその家族によって、多くの黒人が奴隷として厳しい労働を強いられていた。奴隷の1人であるエデンと名付けられた女性(ジャネール・モネイ)は、脱走の機会を図り続けていた。だが、なかなか機会は得られず、そうしている間にも、エデンは蹂躙され続け、彼女の目の前で同胞たちが殺されていってしまう。  場面は変わり