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2021年映画感想

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#寺島しのぶ

映画『空白』感想 辛くとも遺された人々の時間は続く

 邦画の傑作が続く2021年でも、上位に位置する作品。映画『空白』感想です。  漁師の添田充(古田新太)と、中学生の花音(伊東蒼)は、父娘2人暮らし。粗野で自己中心的な添田は娘の話を聞こうとせず、花音もそんな父親に怯えて何も言えずに過ごしていた。  ある日、スーパーの化粧品売り場で花音は万引きを疑われ、店長の青柳直人(松坂桃李)に事務所に連れていかれる。花音は店から逃げ出し、青柳は花音を追いかけるが、道路に飛び出した花音は、乗用車に跳ねられて倒れたところをダンプの下敷きとな

映画『Arc アーク』感想 SF感表現の難しさ

 ちょっと不満が多いですが、こういうジャンルへの期待の表れと思ってください。映画『Arc アーク』感想です。  17歳で産んだ子どもを捨てて、放浪生活をする少女リナ(芳根京子)。バーのステージで自分勝手なパフォーマンスをして追い出されたところ、エマ(寺島しのぶ)に見初められ、彼女の仕事に誘われる。エマは、遺体を躍動感あるアートとして保存する「プラスティネーション」の第一人者であった。エマの見込んだ通り、リナはその技術の才能を発揮して後継者となる。エマの弟である天音(岡田将生