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2021年映画感想

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#吉田恵輔

映画『空白』感想 辛くとも遺された人々の時間は続く

 邦画の傑作が続く2021年でも、上位に位置する作品。映画『空白』感想です。  漁師の添田充(古田新太)と、中学生の花音(伊東蒼)は、父娘2人暮らし。粗野で自己中心的な添田は娘の話を聞こうとせず、花音もそんな父親に怯えて何も言えずに過ごしていた。  ある日、スーパーの化粧品売り場で花音は万引きを疑われ、店長の青柳直人(松坂桃李)に事務所に連れていかれる。花音は店から逃げ出し、青柳は花音を追いかけるが、道路に飛び出した花音は、乗用車に跳ねられて倒れたところをダンプの下敷きとな

映画『BLUE/ブルー』感想 青コーナーの視点から描く美しい悔しさ

 男くさいけれども、とても繊細な作品でした。映画『BLUE/ブルー』感想です。  敗け続きのプロボクサー瓜田信人(松山ケンイチ)の所属するボクシングジムから、久々にスター選手が生まれようとしている。瓜田の後輩である小川一樹(東出昌大)は、その才能とセンスを如何なく発揮して、日本チャンピオンとなるのも目前となっていた。小川は、瓜田の幼馴染である天野千佳(木村文乃)との交際も順調で、瓜田はそんな2人を穏やかに見守る。だが、千佳は、小川の言動が若干おかしい事に一抹の不安を抱き始め