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2021年映画感想

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2021年12月の記事一覧

映画『悪なき殺人』感想 偶然が隠す哀しい滑稽さ

 あまり書くと、どうしてもネタバレになってしまうので、今回は短め。映画『悪なき殺人』感想です。  ドミニク・モル監督によるフランス映画作品。全くのノーマークでしたが、新宿の武蔵野館で別の映画を観た際に、大きく上映予告の広告が打たれているのが目に留まり、評価も高そうなので観ようと決めました。結果、まだまだ自分のアンテナも捨てたもんじゃないと、悦に入ることができました。  この作品は主人公1人の視点ではなく、複数の主人公からの視点を描いて、全体像を見せるというスタイルの作品で

映画『JOINT』感想 詳細な犯罪ディテールが紡いだ物語

 超絶なリアリティ、だけどしっかりとした物語性も魅力的。映画『JOINT』感想です。  刑務所を出所した半グレの石神武司(山本一賢)は、一年間の肉体労働で作ったクリーンな金を元手にして、東京に拠点を構える。元々得意としていた個人情報の「名簿」を扱う詐欺ビジネスを始めた石神は、後輩の広野(伊藤祐樹)が所属する大島会や、韓国移民を世話する友人・ジュンギ(キム・ジンチョル)の協力もあり、手広く稼ぐことに成功する。だが、いくら誘われても、大島会に所属することは避けていた。  カタギ

映画『マリグナント 狂暴な悪夢』感想 元気がもらえる、カンフル剤ホラー

 おちこんだりもしたけれど、(たくさん人が滅多刺しにされるシーン観たから)わたしはげんきです。映画『マリグナント 狂暴な悪夢』感想です。  妊娠中のマディソン(アナベル・ウォーリス)は、幸せな状態とはとても言えず、夫のデレク(ジェイク・アベル)のDV行為により不安な日々を送っている。ある日、デレクと口論になり、突き飛ばされたマディソンは後頭部を壁に打ち付けて出血してしまう。その深夜、家に侵入してきた何者かの手によって、デレクは無惨に殺され、マディソンもその何者かに襲われて気

映画『かそけきサンカヨウ』感想 変化する過渡期の美しさ

 眩しいくらいの清廉潔白さ。映画『かそけきサンカヨウ』感想です。  高校生になる国木田陽(志田彩良)は、幼い頃に母親が出て行き、父親の直(井浦新)と2人暮らしで、家事全般を陽がこなしていた。ある夜、陽は直から、結婚したい人がいると告げられる。2人での暮らしは終わり、再婚相手の美子(菊池亜希子)と連れ子のひなたとの4人生活が始まるが、陽は新しい暮らしと家族に戸惑いを隠せない。陽は、同じ美術部で幼馴染の清原陸(鈴鹿央士)にその戸惑いを打ち明けながら、少しずつ今の家族を受け入れて