マガジンのカバー画像

2021年映画感想

43
運営しているクリエイター

2021年11月の記事一覧

映画『アンテベラム』感想 差別は恐怖からやって来る

 何書いてもネタバレになるところを、あえてネタバレなしでチャレンジ。映画『アンテベラム』感想です。  南北戦争下と思しきアメリカの、南軍の旗が掲げられた綿花農場。そこでは軍属の白人やその家族によって、多くの黒人が奴隷として厳しい労働を強いられていた。奴隷の1人であるエデンと名付けられた女性(ジャネール・モネイ)は、脱走の機会を図り続けていた。だが、なかなか機会は得られず、そうしている間にも、エデンは蹂躙され続け、彼女の目の前で同胞たちが殺されていってしまう。  場面は変わり

映画『DUNE/砂の惑星』感想 ドデカくブチ上げた始まりの物語

 真っ新で観た人間としては、きちんと続きを待つか、原作を読んでしまうか、迷うところ。映画『DUNE/砂の惑星』感想です。  フランク・ハーバードの名作SF小説『デューン 砂の惑星』を原作にした映画作品。過去に幾度も映像化が試みられていて、アレハンドロ・ホドロフスキーが10時間以上の大作映画として企画するも頓挫(後に『ホドロフスキーのDUNE』というタイトルで制作構想がドキュメンタリー映画となっています)。その後、デヴィッド・リンチが映画化しましたが、原作のダイジェスト版のよ

映画『ビルド・ア・ガール』感想 間違ってはいないけど、物足りない

 ちょっと展開が平凡過ぎたかなというところ。映画『ビルド・ア・ガール』感想です。  1993年のイギリスで暮らすジョアンナ・モリガン(ビーニー・フェルドスタイン)は、溢れんばかりの妄想力と文才を持て余す高校生。何かのきっかけを掴み、校内でイケてない層の身である事から脱却したいと考えていた。そんなジョアンナに、音楽好きの兄クリッシー(ローリー・キナストン)が、大手音楽情報誌「D&ME」のライター募集の記事を教える。ジョアンナは持ち前の行動力で、「D&ME」のライター見習いの座

映画『MINAMATA』感想 物語で伝える事と、消費される事の難しさ

 授業教材のような作品でした。映画『MINAMATA』感想です。  1971年、アメリカの写真家ユージン・スミス(ジョニー・デップ)は、数々の報道写真の功績も過去のものとなり、今では酒に溺れて絶望する日々を送っていた。そんな折、日本のCM出演の依頼があり、通訳のアイリーン(美波)と出会う。アイリーンはユージンに、日本で問題となっている水俣病について、現地の水俣に訪れて撮影取材をして、世界にその事実を報道してもらいたいと依頼する。ユージンはアイリーンと共に水俣を訪れ、公害に苦