マガジンのカバー画像

2021年映画感想

43
運営しているクリエイター

2021年10月の記事一覧

映画『最後の決闘裁判』感想 現代まで続くクソ価値観への批判

 男性マッチョイズム、女性蔑視がいかにクソであるかを描いた傑作。映画『最後の決闘裁判』感想です。  1368年の中世フランス、騎士のジャン・ド・カルージュ(マット・デイモン)は、王のために各地で戦う歴戦の勇者。幾度となく修羅場を共にしたジャック・ル・グリ(アダム・ドライバー)とは、戦友同士として信頼し合う仲だった。だが、2人が仕えるアランソン伯爵ピエール(ベン・アフレック)は、直情的なカルージュを嫌い、ル・グリを信頼し、重用していた。カルージュの苛立ちは、ピエールと共にル・

映画『プリズナーズ・オブ・ゴーストランド』感想 園子温監督の次回作にご期待ください。

 2021年のベスト映画を決めるのは難しそうですが、ワーストはぶっちぎりで確定です。映画『プリズナーズ・オブ・ゴーストランド』感想です。  サムライタウンの銀行を襲撃したヒーロー(ニコラス・ケイジ)は、強盗に失敗して街を牛耳るガバナー(ビル・モーズリー)に捕らえられ、投獄されていた。  ある夜、ガバナーのお気に入りの娘であるバーニス(ソフィア・ブテラ)たち3人が、ガバナーの支配から脱走して、ゴーストランドと呼ばれる禁止区域で消息を絶つ。  ガバナーはヒーローの鎖を外し、自由

映画『空白』感想 辛くとも遺された人々の時間は続く

 邦画の傑作が続く2021年でも、上位に位置する作品。映画『空白』感想です。  漁師の添田充(古田新太)と、中学生の花音(伊東蒼)は、父娘2人暮らし。粗野で自己中心的な添田は娘の話を聞こうとせず、花音もそんな父親に怯えて何も言えずに過ごしていた。  ある日、スーパーの化粧品売り場で花音は万引きを疑われ、店長の青柳直人(松坂桃李)に事務所に連れていかれる。花音は店から逃げ出し、青柳は花音を追いかけるが、道路に飛び出した花音は、乗用車に跳ねられて倒れたところをダンプの下敷きとな

映画『由宇子の天秤』感想 「正しさ」を疑う力作

 この作品を観る直前、前の上映回から出てきた女性がボロ泣きしていて、「ああ、覚悟して観なきゃいけない作品なんだな」と思わされました。映画『由宇子の天秤』感想です。  ドキュメンタリーディレクターの木下由宇子(瀧内公美)は、3年前の女子高生いじめ自殺事件の取材撮影を続けている。由宇子の妥協せずに真実を追究する姿勢は、学校の責任だけでなく、事件当時の報道メディア批判にも繋がると、局側からは煙たがられていた。それでも、由宇子の取材チームの取材によって、真相を明るみにする映像が揃い

映画『ドライブ・マイ・カー』感想 抑えきれずに、わずかだけ溢れる想いを描く傑作

 濱口監督作品の神髄を、初めて理解、堪能することが出来ました。映画『ドライブ・マイ・カー』感想です。  俳優で劇作家の家福悠介(西島秀俊)は、妻である脚本家の音(霧島れいか)の事を深く愛している。それが故に、音が他の男と不貞を働いていることにも気づかない振りをし続けていた。ある日、家福は音から、今夜話があると告げられるが、その夜、家福が帰宅すると、音はくも膜下出血で還らぬ人となっていた。音と、音が話そうとしていた事を永久に喪ってしまった家福は、舞台に立つことが出来なくなって