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2021年映画感想

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2021年9月の記事一覧

映画『孤狼の血 LEVEL2』感想 鈴木亮平の独壇場、役所広司の不在による存在感

 『仁義なき戦い』の支配から脱し始めているように思えました。映画『孤狼の血 LEVEL2』感想です。  尾谷組と五十子会の抗争から3年。亡き大上刑事のやり方を引き継いだ日岡秀一(松坂桃李)は、チンピラの近田幸太(村上虹郎)をスパイに使いながら、広島ヤクザのパワーバランスを操り、大きな抗争もなく収めていた。  そんな中、五十会の組員、上林成浩(鈴木亮平)が出所する。上林は、出所したその足で、自分を痛めつけた刑務官の妹である神原千晶(筧美和子)を惨殺。弱体化した五十子会や、上位

映画『サマーフィルムにのって』感想 「好き」という肯定感の心地好さ

 キラキラした青春ですが、オタク人種に対する優しさに溢れています。映画『サマーフィルムにのって』感想です。  高校で映画部に所属するハダシ(伊藤万理華)は、時代劇オタクで特に勝新太郎の大ファン。だが、自分の書いた時代劇脚本は部で採用されず、キラキラした恋愛映画ばかりを撮る部活動に嫌気がさしていた。放課後は、天文部のビート板(河合優実)と剣道部のブルーハワイ(祷キララ)と、溜まり場にしている廃バスの中で、名作時代劇を観てはチャンバラ遊びで殺陣を再現する日々。  ハダシは映画館

映画『ドント・ブリーズ2』感想 角が取れて丸くなっても、殺る気はマンマン

 ジャンル変更しつつも、続編としてちゃんと面白かったです。映画『ドント・ブリーズ2』感想です。  若者による強盗事件に端を発した惨劇の夜から8年―。盲目の老人、ノーマン・ノードストローム(スティーヴン・ラング)は、火事から逃れて倒れていた幼女を、自分の娘として育てていた。  その娘、フェニックス(マデリン・グレイス)は、ノーマンの元でサバイバル能力と賢さを身に着けていく。フェニックスは、次第に外の世界に出て学校へ行きたいと願うようになるが、ノーマンはそれを許さず、2人だけの

映画『返校 言葉が消えた日』感想 恐怖で伝える哀しい歴史

 ド直球のベタホラーですが、しっかりとメッセージ性が伝わる作品でした。映画『返校 言葉が消えた日』感想です。  戒厳令が敷かれ、国民党による政治的弾圧が続く1965年の台湾。反体制思想を取り締まる名目で、自由に読書をすることも禁じられている中、翠華高校では監視の目から隠れながら、教師と有志の生徒による読書会の活動が密かに続けられていた。  ある日、放課後の教室で目覚めた女子学生のファン・レイシン(ワン・ジン)。なぜか誰もいない校舎を彷徨っていると、読書会のメンバーであるウェ