6月19日(金) 雨、旅の終わり

スッキリと起きる。スッキリと起きるだけでその一日は殆ど満足だ。
スッキリと朝食を食べスッキリと家を出る。
雨。

電車で『地底旅行』の終盤を読み進めていく。すげえ面白い。少年の心で旅をなぞる。外は雨。

旅も終わりに近付き残り数ページ、と思われたところで名残惜しくも電車を降りる。くすんだ街を通り抜け雨宿りスポット(会社の隠語)へ。
久々に着てきたジャケットを脱ごうとするとポケットに何かがある。お宝だと思いながら取り出すとそれはいつかのメルティーキッス抹茶味だった。ありがとう。
丁度良くやることがあった昨日と比べ今日はしっかりと暇で、暇じゃないフリに追われる。 

昼休みは昨日の続きで『電脳コイル』3話を観る。3話とは思えないくらい盛り上がっておりとにかく画がかっこいい。キャラ自体は教育テレビらしいゆるやかな作画なのだけれどやっていることがかっこいい。

このまま4話を観たい欲望に駆られたがあえて雨の街へ出る。アニメと同じくらい雨も好きだ。
傘を差して少し冷たい空気を吸いながら歩く。こうして歩行を楽しむために歩行をするのは久々というか今週は初めてな気がして胸が高鳴る。
紫陽花が咲いているのではと公園に寄ってみるも紫陽花はなかった、しかし帰り道にあった。雨に濡れたピンクの花々に蜂が纏わりついている。今年初めて愛でた紫陽花だった。

雨宿りスポットに戻り残り数分の休み時間で『地底旅行』を読む。すると一ページちょいで本編が終わった。まあまあな紙幅は残っていたが殆どが解説というトラップだった。
とはいえ解説も良かった。1864年に発表されたこの古典SFのどこまでが当時の科学に基づいておりどこからが科学の先を行く空想か、というのを知れて面白さが倍増する。

『地底旅行』そのものはまあなかなか予想のつかない旅行で終始面白かった。凄く印象に残る小説ではなかったけれどこの地上で暮らす限り度々思い出すであろう情景が描かれていた。
ちょうど月〜金までかけて一つの冒険を読むのは良い体験だった。今までは重めの本を鞄に入れっぱなしにしてちまちま読んでいたがこれくらい軽い読み味の小説を毎週読んでいくのも結構良いかもしれない。

昼休みが終わり再放送のように働く。
何日か前に自販機に導入されたアイスココアを飲みたいとぼんやり思っておりタイミングを測ってきたが今がその時だ!とボタンを押すと、ブラックコーヒーが出てきた。悲しみに暮れる。
一応義務として自販機会社に電話をするとすぐに人が来て下すった。ボタンの設定が間違っていたらしい。電話口では断ったけれどコーヒー代を頂いてしまう。今日は無料ブラックコーヒーをお土産に帰ろう。

ココアのない労働を続け定時を迎える。ここからが本当の人生だ。
祝福の雨に打たれながら我が城を目指す。
電車で今日の記録を付ける。
線路の数千キロメートル下では我々の知らない地底生物が今日を過ごしている。
数千キロメートル上空には雨の降らない宇宙が広がっている。

夜はカレー。ならば金曜夜にカレーを食べる習慣を持たない別の宇宙の私は一体何を食べているのか。

Maison book girlのベストアルバム『Fiction』発売まであと5日。

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