5月30日(土) 別れ

目覚めたら土曜日の朝で嬉しかった。
カレーに甘酒を入れて食べる。

かなり思い出深い商業施設がもうすぐ閉店すると聞き、今日は最後の訪問をするつもりだった。
去年買ったナイスなTシャツに着替える。

家を出るまでパステルで遊んだ。ボコボコのハガキにどこでもない海を描く。
何も見ずにガサガサと粉を伸ばしていたが何か足りない。ふと窓辺に飾られた『Summer Pockets』(島を舞台にしたゲーム)のポストカードを見ると綺麗な海があり、海の奥を濃く塗れば良いと気付きを得てやってみるとそれは海になった。

思い出の商業施設は幼い時分によく利用していた。そこは時を経て前職場の近所にもなり再びお世話になった。
一年ぶりにその最寄駅に降り立ち、毎朝歩いていた遠回りルートで一旦"通勤"してみる。すると自分が一年前にタイムスリップした、というか世界の時間がバグを起こしたような不思議な錯覚に陥った。
変わりない草花なんかを見ながら歩いていると、今が「2020年」だとかそういうことは世界の側には全く関係ないのだと分かる気がした。

"15年前に通っていた場所"(前職場に対して使っていた隠語)を見遣る。この隠語は15年後の目線から目の前の労働を遥か過去のものとして捉えるための方策だった。
目の前まで来ると今もそこで働いている気がしてならないが、「最も行きたくない場所」を「もう二度と行かなくていい場所」として視認する快感はなんとも言い難い。今の職場もやがてそうなるのだろう。ここもまた15年後に再訪したい。

あの頃昼休みに春夏秋冬歩いていた道をフィルムカメラで撮りながら進み、もう二度と来られない商業施設に到着。
開店を待つ人で一杯だった。こんなに盛り上がっているここは見たことがない。近所の人達はこれからどこで買い物をするのだろう、と切ない気持ちになる。

開店した店内は記憶と違わぬいつもの場所だった。店員さんのお辞儀を見て泣きそうになる。ここにある営み全てが形をなくし、もう二度と来られない記憶の中の場所になるのが信じられない。
とはいえ閉店セールは閉店セールだから隅々まで品物を見て回る。ショッピングという行為自体が本当に久しぶりで愉快だった。もはや密も気にせず皆必死に買い物していた。

昼になり一時休憩。何故か持ってきたチャーハンを外のベンチで食べる。
一年前まではここでこうしてお弁当を食べていた。麻酔から目覚めたようなラグのなさで何もかも覚えている。

午前中で現金を使い果たしていたためATMで追加。アホだなと思いつつ今日は全てを赦したい。
過剰に歩き回って疲れ果て、大荷物を手に炎天下を引き返す。最後に振り返って施設を一瞥する。ありがとう、思い出の場所。

今にも熱中症になりかけながら日傘を差して歩く。一年前と変わらぬ帰り道だった。
いつも顔を合わせていた猫が住んでいた原っぱはなくなっていた。あの子は今どこかで元気にやっているだろうか。あの子がいなければ一年も働けなかっただろう。

満身創痍で家に着き購入品を整理。

驚異の6000円引きだった髪飾り。逆にこれらに合いそうな浴衣を買いたい。

半額の水筒。水筒一本では保たない気候になってきたためサブ用に。

ヴェルヌ『地底旅行』。お世話になった書店の形見として小説を買いたかった。

BRUTUS最新号。BRUTUSは気になる特集の時だけ買うがクラシック音楽は猛烈に気になるタイミングだった。
あとは衣類を色々購入。会計間際に勢いで足した500円のスカートが意外と良い感じだった。

熱を持った体で夕方まで緩慢に過ごす。夏の手強さをようやく思い出した。
ベッドでBRUTUSを読みながら紹介されているクラシック音楽を聴いたり聴かなかったりした。
いざクラシックを聴こうとするとあまりに広大すぎて気圧される。攻めるパターンは沢山あるようだが自分がどこから攻めたいかという取っ掛かりもない。面倒になってしまいそうだからまずは体系立てず適当に繋いで行こうか。

BRUTUSをめくっていくと著名人がクラシックを三曲紹介するページに突然霜降り明星の粗品さんが出てきて驚いた。彼が東方projectについて語る動画を今日の朝なんとなく見返していたところだった。
じゃあ粗品さんはクラシックも聴いている上で東方曲を聴いているということになり、そう思うと彼が挙げていた思い入れ深い東方曲にも違った味わいが生まれる。

https://youtu.be/08BNu7DXxN8

クラシックを聴いていると東方の曲色が恋しくなり、東方曲を弾いてみた動画で有名なまらしぃさんのピアノ演奏を観た。どう頑張ってもこんなには弾けないのだから私がピアノをやろうとしなくていいのではと思ってしまいつつやはり憧れる。
そしてやはり東方の、ZUN様の曲は鮮やかで心が躍る。彼の音楽の素養については殆ど知らないが何を聴いて育ったらこういう作曲家が生まれるのか、はたまた天才なのか。

それから東京アクティブNEETsのジャズ演奏動画を観た。オーケストラ版の交響アクティブNEETsは聴いていてもジャズの方はあまり聴かずにいたがこのタイミングでストンとハマってしまった。
ジャズ的に使われるドラムもピアノもベースも物凄く格好良い。たまにゲスト出演する和楽器もこれまた格好良い。楽器すげえな。セッションとかしてみてえな。

夜はコナンを観ながら鍋。猛暑の余韻に追い打ちをかけた。冷たい酢漬けの野菜が染み渡る。

夕食後ベッドでダラダラ日記を書く。なんだか人に見られることを意識し過ぎている気がする。「霜降り明星の粗品さん」などと書かず「粗品」で良いではないか。もっと説明を省いたり好きなURLを貼りまくったりして私物化しても良い、私物なのだから、と思いつつどこか抑制してしまう。Twitterで付いた悪い癖かもしれない。

憂鬱になってきたため、東方projectの音楽の中でも特にえすもの思い入れがある曲を選んでもらった。

・狂気の瞳〜Invisible Fullmoon
たまたま聴いたこの曲に度肝を抜かれて東方を知った

・ネイティブフェイス
この曲を流しながら沢山のイギリス人の前でルービックキューブを披露した

・感情の摩天楼〜Cosmic Mind
『東方星蓮船』6面ボステーマ曲で、この曲に感極まりながら弾幕に耐えてクリアしたことが印象的

・亡き王女の為のセプテット
東方人気投票音楽部門で1位になってほしくて毎年投票してきた、そして大抵1位だった

・オリエンタルダークフライト
東方人気投票音楽部門で1位になってほしくて毎年投票してきた、そして大抵130位だった

・車椅子の未来宇宙
天体観測をしながら聴いた

・ヒロシゲ36号〜Neo Super-Express
列車やバスで旅をしながら聴いた

・桜花之恋塚〜Japanese Flower
桜を見ながら聴いた

・レトロスペクティブ京都
京都で聴いた

・夢消失〜Lost Dream
夢を消失させながら聴いた

思い入れだらけだ。
そういえば東方人気投票、と思い調べると来週から今年の投票が始まるようだった。
過去の投票結果を見ながら、もしや昔の自分の投票コメントが残っているのではと探してみるとあった。悪びれない長文だからすぐ分かった。
中学時代の文章だから今見ると酷いものだが、手癖や分かりにくさは今の自分と酷似しており苦笑する。当時の東方愛は流石に瑞々しく、時を超えて勉強になった。こういうのがインターネットロマンだ。

寝て起きたらニチアサ。もう二度と行けない商業施設で遊んでいた頃は東方もニチアサ特撮も大好きだった。今の私は両方に回帰し、あの場所だけを失ってしまった。

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