祝!! 『メダリスト』小学館漫画賞一般部門受賞問題

 アフタヌーン連載中のつるまいかださん作『メダリスト』が第68回小学館漫画賞一般部門を受賞しました!! つるまいかださん、おめでとうございます!!!
 2018年2月11日開催のコミティア123において即日新人賞その7が行われ、僕も審査員として参加したのですが、それがつるまいかださんとの最初の出会いでした。約4時間で百数十本の応募作品を拝読するという空手の百人組手か野球の千本ノックみたいな会だったのですが、その時つるまいかださんが応募してくださった『鳴きヤミ』という作品が百数十作品の中でもピカッと印象深く、賞を差し上げ担当編集者がつくことになりました。それから約2年後。アフタヌーン編集部のネーム会議に『メダリスト』1話と2話のネームが提出され、あまりのおもしろさに感激して「すごい! つるまいかださんって誰だっけ!?」と担当編集者に尋ねると、「即日新人賞で剣道部の4コマ漫画で応募して賞を取ったつるまいかださんですよ!」と軽く怒られ、その後2020年5月25日発売のアフタヌーン7月号から『メダリスト』は連載開始されました。昨年は「次にくるマンガ大賞2022コミックス部門」で1位を獲得し、その半年後に小学館漫画賞一般部門を受賞。実に大したものです。百人組手か千本ノックみたいな即日新人賞でつるまいかださんの作品をちゃんと見逃さなかったオレもエライぞ! こっちは誰も褒めてくれないから自分で自分を褒めることにしました。
 講談社漫画賞もそうなのですが、小学館漫画賞の選考も、どの作品がどこの出版社の何の雑誌で連載されているのかなんてことに忖度せず、選考委員の先生方が口角泡を飛ばして侃々諤々と議論をされているのだろうと想像されます。選考委員の皆様、本当にありがとうございました。
 小学館漫画賞受賞の報せを頂いてからまだ直接つるまいかださんとお会いできておりませんが、つるまいかださんもさぞお喜びだろうと思います。電話で僕に受賞を知らせてくれた担当編集者はもちろん大変な喜びようでした。担当編集者にとっても、担当作品は自分の子供のようなものです。

 そんな訳でして『メダリスト』小学館漫画賞一般部門受賞のお知らせとあわせて、マンガ編集者にとって担当作品ってどんなものなのか、あるいはマンガ作品にとってマンガ家と担当編集者はどんな存在なのか、そんなことを考えてみたいと思います。
 といってもそんなに大した話ではありません。答えももう書いてしまっております。マンガ家にとってマンガ作品は、血肉を注いだまさに我が子のようなものでしょう。自身の分身だと感じる方もいるかもしれません。そして商業マンガ雑誌の場合、その作品を真っ先に、世界で一番おもしろいと思って世の中に送り出すことを請け負った存在が担当編集者です。性別を問わず、マンガ家は自身の心血を作品に注ぐ母親のような存在だと思います。一方で編集者はやはり性別を問わず、作品の父親のような存在かもしれません。作品という我が子に対し、やろうと思えばどこまでも育児に携われるし、やらないとなればいくらでもほったらかしにできなくもない存在。でも作品が誕生する以前には母親であるマンガ家ともども父親として揃っていないと始まらない。いざ始まったらどこまでも深く我が子にコミットもできるし、蒸発しちゃっても作品の生死に即かかわったりはしない存在、マンガ編集者。作品を前にしてマンガ家と担当編集者を両親に見立てると、そんなふうに分けられるのではないかと思います。そうだとすると『メダリスト』は、ものすごく教育熱心な両親によって愛情豊かに育まれた作品です。すくすくと育ち、今まさに成長期と言えます。
 では、連載マンガ作品に対して編集長はどういう存在かというと、もちろん人によって様々でしょうが、僕自身に限って言えばこれはもう間違いなくおじいちゃんです。孫たちである作品がかわいくてしょうがない、少々モウロクしたおじいちゃん。モウロクしてるから、ときどきトンチンカンなことも言う。今回の『メダリスト』の小学館漫画賞受賞も、何だか孫が運動会で一等賞を取ったと知らされたような心持ちです。よう走ってようがんばっとって、ほんにえらいのう!! 心からわしゃそう思うよ!!
                                 金井 暁