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写真を撮るように日々をこう

この記事は、わたしが友人と配信しているポッドキャスト「たるいといつかのとりあえずまあ」内でたるいの好きなものを紹介しているコーナーを書き起こし、要約したものです。

1月下旬のラジオ「"それでハッピーエンドなんだ”ハッピーエンド選手権〜!」

今回の好き
柴崎友香『続きと始まり』(集英社)


たるい)柴崎さんの小説はこう、主人公がたとえばヒーローだったりとか、極端な状況にいる人では基本的にはなくて、なんてことないって言ったらあれだけど、なんていうんだろう、ただ生きている、でもちゃんと生きている人たちが主人公なんだよね。その人たちが写真を撮るように日々をこう丁寧に見ている。職場であったこととか。

いつか)うん

いつか)この本では東日本大震災のこととコロナのこととウクライナで戦争が始まったことのエピソードっていうのが、3人の語り手を順々にしながら語られているんだけれど、彼らはある意味その時なにでもない人たち?なんだよね。例えば防衛大臣とかでもないしウクライナで戦っている兵士でもない。ただ、わたしたちと同じようにさ、たとえばウクライナに行ったことある友人がいたりだとか、友人が活発にそのウクライナの戦争に対してダメだというツイートをしているとか、それを自分が見ている、という、その距離感をすごく、丁寧にうつしとっているというか、そういう作品なんだけれども。なんか、そのたわいなさというんですかね。

いつか)うんうん

たるい)ここに描かれている物語っていうのは、なんか、特権的なものじゃないんだよね。すごくだから例えばディズニー映画とかにある英雄伝説的な、「自分は選ばれし者なんだがそれを全うすることができない」っていう物語じゃ全くなくて、ただ自分が日々を生きている、淡々と日々を生きている、その中で世の中は変化していって、自分はこう感じましたっていうだけなんだけど、それが一番書き残すものとして尊いというかね。なんかじんわり泣いちゃうんだよね。

いつか)なるほどね

たるい)こう前に前に進んでいく推進力が強い文章じゃないのよ。本当に一歩ずつ一歩ずつ歩いていく文章なんだけど、その日々を写しとっているんだけど、いやーなんか、そういう英雄とかじゃない人の一日の中にももちろん震災が起きてコロナがあって、ウクライナの戦争があるわけだけどそういうものをみんな受け取っているという当たり前のうちの一人じゃん私らも

いつか)うんうん

たるい)なんかね。すごく感動したんだけどあんまりこううまく喋れない。あの人の映画と似てるかも。濱田竜介さんってあのドライブマイカーの人の。柴崎さんの「寝ても覚めても」を濵田監督映画化してるけど。あの人の映画もこう淡々と長いんですよハッピーアワーって、5時間あるんだけど

いつか)長っ

たるい)うん長いね

いつか)長っ

たるい)まあドライブマイカーも2時間59分っていうね

いつか)長っ

たるい)うん、長いんだけど。なんか、いろんなことを取り戻す本だと思ったから、まあ気が向いた時にというか何かこれが必要だと思った時に手に取っていただけたらなと思う本でした。

いつか)素晴らしい。


今回の好き
柴崎友香『終わりと始まり』(集英社)


前回の好き
川野芽生『かわいいピンクの竜になる』(左右社)


ポットキャスト「たるいといつかのとりあえずまあ」
作家の垂井真とオーケストラ奏者(Vn)の山本佳輝(ラジオネーム:いつかのコシヒカリ)。東京藝術大学で出会った1997年1月31日生まれのふたりが、お互いの活動の近況や面白かったコンテンツの紹介などを通して、今世をとりあえずまあ楽しもうとしてる番組

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