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格闘技やっていて良かったなという話

かなり前のことです。息子も娘も学生の頃の事なのでコロナ前です。

ちょっと思い出したので記事にします。

仕事帰りに、ある大きめの本屋に寄ることにしました。店の前まで来たら、エプロンした男性店員が、入口で、若い男の肘をつかんで 並んで入るところに遭遇しました。僕の2mくらい前です。

何してるんだろう?と一瞬不思議に思いましたが、万引き犯を捕まえたんだ、と、ほぼ同時に理解しました。

直後、万引き犯が店員さんの手を振り払い、逃げ出しました。万引き犯が持っていたリュックサックが逆さになり、万引きした漫画やグラビアアイドルの写真集などが、たくさん落っこちました。店員さんは慌てて追いかけ10 mくらい走ったところでタックル、足首をしっかりつかんで離さず、万引き犯は、いわゆるアスキーアートでいう「orz」の形で四つん這いになりました。

僕はゆっくり万引き犯に近付き、店員さんに「協力します」と声をかけ、四つん這いの万引き犯の右横から立った状態で自分の左膝を相手の脇腹に触れるように軽く当て、右手をスッと首に回し、送襟絞もしくはスリーパーホールドができる体制をとり、犯人にスローに囁きました。
「僕、武道やってますからね。抵抗したら絞めて落としますよ。」
犯人は四つん這いのまま
「わ、わかりましたっ!抵抗しません…」
と言い、おとなしくなりました。

警察が来るまでの数分間、この犯人の手の動きだけには注意しました。もしナイフをポッケに入れていて、それを取り出したりしたら、とても危険だからです。なのでついでに犯人に言いました。
「僕、打撃もやってますからね。本当に動かないで下さいね。」
犯人は「はいっ!何もしません!」
と四つん這いのまま、悲鳴のような声をあげました。

落とした内容物からこの万引き犯はオタクっぽい。漫画もたくさん読んでるでしょう。漫画には格闘技関連のが多いので、格闘技の専門用語はすぐ理解するだろう、と僕なりの考えがありました。あえて「落とす」だの「打撃」だのの言葉を使ったのは、そのほうが真実味があると思ったためです。

暫くしてゴツい警察官が3名程来ましたが、どんな通報が行ったのか、皆、通常の防刃ベストより分厚い、おそらく防弾チョッキ?で身を固めた状態でした。万引き犯はそのまま確保連行され、店員さんと僕も事情聴取のため、3名一緒に警察署に行くことになりました。

店員さんは「この人は協力してくれただけです。」と僕のことを説明しました。

目の前で事情聴取されていたので、万引き犯の素性がわかりました。割と偏差値の高い世間でいい大学と言われる大学の学生でした。関東の田舎の方から上京していて一人暮らししていて留年しているとか…

この学生の親もこのこと知ったら残念に思うだろうな…と、勝手に想像して悲しくなりました。

一人の警察官から僕に対しては
「ご協力ありがとうございます。でも、あまり無理しないでくださいね。」と言われました。

店に店員さんと戻ると、事務所に案内され、たくさんお礼を言われました。その店員さんは、大きなその店で、かなり上のポジションのようでした。その店員さんも格闘技好きでやっているとかで、格闘技の話がはずみました。15分程談笑したあと、店からご協力のお礼です、と有名メーカーの高級シュークリームを手さげ紙袋ごと頂きました。大きな書店にはこんな用意もしてあるのか…と感心しました。

シュークリームは、娘と美味しく頂きました。

この時は、僕自身は、ほとんどエネルギー消耗せず、肉体的には誰も傷付けず、僕も傷付かず、言葉だけで全てを完結しました。胸がドキドキするとか、戦闘モードになってカッカとするとかも、全くありませんでした。日常の延長線上で、この事件に関わった感じです。

今、考えると、この時、冷静だったのは格闘技やっていた自信からですし、格闘技やってて良かったなとは思います。

しかし、その反面、別なシチュエーションだったら全く違うことになったかもしれません。

頭のおかしい奴が刃物振り回したりした時とか
理不尽に変な野郎に絡まれたりしたら
冷静ではいられないでしょう。

そして僕より強い人なんていくらでもいます。
強い暴漢の場合は制圧できないでしょう。

やはり
「三十六計逃げるに如かず」
「君子、危うきに近寄らず」
が、正しそうですね😁
これらを基本にして、平和に生きていこうと思います😃

写真はkosuketsubotaの作品から拝借しました。

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