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『急拡大したエンジニア組織の「成長痛」に メルカリはどう立ち向かっているか? 』

どーも。afroscriptです。

KicSpace(きらぼし銀行さんが運営するコワーキングスペース)とSun Asteriskさんが運営する下記のイベントにお呼びして頂いたので、

僕が入社して以降(2019年3月〜2020年8月)のメルカリのエンジニア組織の取り組みについて登壇してきました。

発表資料はこちら↓

登壇時間が10分のみだったので、わりと広く浅くしか話せなかったかな〜という印象があったので、資料の補足の意味も含め、noteにしてみました。


イベントの概要

イベント前半は、現在まさに急拡大中のand factoryさんがどうやってエンジニア採用しているか?というお話だったので、

僕の方からは、採用がうまくいって組織が急拡大をすると、組織にどのようなことが起きて、それをどう乗り越えていくのか(正確には「今まさにどう乗り越えようとしているか」)というのを、弊社メルカリを事例としてお話させていただきました。

(なお、この発表はあくまで僕個人目線での見解をまとめたものです。

各チームやポジションによって、いろいろ感じることや考えていることは違うとは思うので、そのあたりはあしからず。)


急拡大後してどのようなことが起きていたのか?

1年間で1000人が1800人にまで急拡大したタイミングで、僕はメルカリに入社したのですが、実際に入ってみてしばらくして僕目線で感じたのは下記のようなことでした。

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なお、このあたりは昨年CTOのsuguruさんがよりせきららに語っているイベントのレポートがあるので、よければご参考に。


で、現在入社から1年半が経ったわけですが、最近これらの課題に対して少しづつではあるが、光が見えてきたんじゃないかと思います。

もちろん解決したとは全然言えないず、まだまだ課題だらけではありますが、当時感じていたカオス感よりは薄まってきたんじゃないかなと。


では、この1年半でどんなことが行われたのかと言うと、こんな感じ。

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ちなみに「組織体制の変更(Camp体制への移行)」の部分は、諸事情でイベントでは話せなかった部分なので、このnoteを書くときに付け足しました。


Onboardingの整備

メルカリでどんなOnboardingが行われているかは下記のスライドがすごくきれいにまとまっていますので貼っておきます。(mercariではなくmerpayのオンボーディングについての資料ですが、大まかな流れは同じです)

また、新卒のOnboardingは僕もガッツリ担当させていただきました。気になる方は参考記事をいくつか貼っておきます。


エンジニア組織のVisionの定義、 Engineering Principles / Ladderの作成

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メルカリのエンジニア組織のVisionやEngineering Principlesについては、下記ページに詳しく書いてます。

Engineering Ladderについては現在は運用しつつ改善している途中なのでまだ公開してないですが、おそらくそのうち公開されると思われます。


Engineering Principlesの作成プロセスについて

Q&Aタイムに「Engineering Principlesはどのように作成が進められたか?」という質問を参加者から頂いたので触れておきます。

この作成プロセスには、下記記事にCTOがせきららに答えてあります。

イベントで回答した部分を抜粋するとこんな感じ。

広木:ちなみにこれって今ドラフトということですが、どんな感じのプロセスで評価制度などを作っているんですか。

名村:ないところにこれを入れるとなると、けっこう大変なんです。エンジニアの合意を得るのがすごい大変で。逆に言うと、「反論しなかったじゃん」というのをやっちゃおうと思って。

(会場笑)

広木:「反論しなかったじゃん」というのをやっちゃおう?(笑)。

名村:そう思って、反論できるチャンスをいっぱい作りました。作っていく課程で、まずベースのドラフトを作って全体に共有して、何度かタウンホールミーティングのようなかたちで「もし何か意見があれば来てください」というのを。月に1回、1週間に1回、2週間に1回、というふうに何度か開催しました。

かつ、Google Documentなので「コメントもできます」というかたちです。ディスカッションと、ここのプリンシプルにもありますがDisagree and Commitというのがあります。要は「反論はもしあるならしてね」「ただ、決まったら基本合意ですよ」というものです。こういうのはだいたい、とくに僕の勝手な個人的な感覚で言うと、日本人は導入したあとに文句言うんですよ。

(会場笑)

導入して実際に運用しだすと、「あれはダメ、これはダメだ」「やってらんねー」などと言い出すんですよね。「いやいやちょっと待って」「反論するチャンスあったでしょ」というふうにきちんとしとこうと思っています。導入に向けて「これでもか」というぐらい反論するチャンスをきちんと与えて、きちんとディスカッションはしました。

一応コミッティーというのを作って、何人かこういう評価を作りたい人たちを集めて、そこで議論しながら現場主導では進めてもらっていますね。

広木:納得感を作るのはけっこう大変ですよね。だから「そこに投資していこう」という時間をかけているということですね。

名村:そうですね。さすがに300人くらいを超えてくると「全員納得」には絶対ムリがあります。なので逆に言うと「反論しなかったでしょう」って。


組織体制の変更(Camp体制への移行)

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これは先に触れた、イベントではお話できなかった部分ですが、2020年1月より、メルカリでは大きく組織体制を変更しています。

社内では「キャンプ体制」と呼んでいて、開発チーム全体をCampと呼ばれる単位に分割し、各Camp内にはPMもエンジニアもいるので、それぞれが1つのカンパニーのように独立して企画〜リリースまで行えるようになっています。

企画〜リリースまでCamp内のみのコミュニケーションで完結するので、組織全体でみると不要なコミュニケーションを極力減らすことができます。

とはいえ、各Campの独立性を高めることで、Camp内で得た知見までクローズドになるのは望ましくないので、Mercari Camps Talkという社内イベントを月1で開催し、他Campにも広げるべき知見はそこで共有し合うようになっています。


Engineering All Hands(エンジニア組織全体会議)について

ここからは「今やっていること / これからやりたいこと」の部分です。


メルカリではAll Handsという名の全体会議があります。

(Mercari JP All Handsであれば、mercari JPの社員全員が集まる会。Engineering Office All Handsであれば、Engineering Officeに所属するメンバー全員が集まる会、といった感じ)

で、これはメルカリに入って最も驚いたことの1つなのですが、Mercari JP All Handsというのが、なんと毎週行われています。

つまり毎週Mercari JPに所属する社員全員が集まる場があるのです!(この規模でっ!)


なので、そのJP All Handsでエンジニア組織に関わることも話されてはいたのですが、やはり限られた時間の中でエンジニア組織について十分に話すことは難しいということで、

Engineering All HandsをMonthlyで開催することになりました。

(もともとQに1回くらい(??)で、何か特別なことがあるときはEngineering All Handsが不定期に開催されることはあったのですが、定例開催となったのは今年7月から)


7月、8月は大胆に90分の時間をかけ、そのうち半分はQ&A時間に費やし、とにかく対話量を増やしました。

Visionの背景やそこに込めた想い、Vision実現に向けて現在取り組んでいる施策の意図や具体的な内容などなど、対話を通じて、技術execたちとメンバー間の相互理解は大きく進んみ出したように思えます。

(ちなみに7,8月は90分で開催したが、今後は、その時々の状況によって30minでも60minでも柔軟に変えればいいと思っている)


HRデータ基盤の整備について

これも参加者から「どのようなデータを整備・活用しているか?」と質問を受けたので、いくつか紹介しておきます。


1つ目は、すごーく基本的な社員情報の整備。(フルネームとか、名前の漢字とか、所属チームとか、いつ入社したかとか、入社前の面接時のデータとか、評価データとか...)

恥ずかしながら、社内のいろんなツールにデータが分散されていて、全てを参照できるマスターデータ的なものがなかったので、(ここはHR部門主導で)それらの整備・活用のための大きなプロジェクトが動いています。


2つ目は、Qに1回行われているEE(=Employee Experience) Surveyの結果です。

メルカリのエンジニア組織では、下図の①部分のように、eNPSに影響を与えるであろう要素を整理し、eNPSを分解したモデルを作成し、それぞれの要素を測定するための質問をEE Surveyで投げかけています。

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現在はそれらを測定し、現在状況を数字で把握することまでしかできてないのが正直なところですが、

今後はそれらの結果から、現在行っている各施策が効果があるのかないのか、あるならばどれくらい効果が出ているのかを検証し、より効果の高い施策を強化しているようにもろもろ整備を進めているところです。


その他、最近では、週に1回簡単な質問(「今週の調子はどう?」くらいのやつ)にSlack上で答えてもらうことで、おおよその組織の状況を把握するというようパルスサーベイと呼ばれる取り組みも始まっています。


さいごに

個人的には今回の登壇は、自分がメインで関わっていないことも多々盛り込んで話しているので、なかなか不安な点も多かったというのが正直なところですが、

それゆえ、過去のいろんなプロジェクトのドキュメントを掘り起こしてみたり、弊社のエンジニア組織に関する記事をたくさん読み返すこともできて、改めて自社を知るいい機会になったな〜と思いました。


お呼びしていただいたSun Asteriskのみなさん、一緒に登壇したand factoryの深澤さん、ありがとうございました!:)


おまけ

最初に登壇したand factoryさんの採用ノウハウのお話の中で、「オススメのエージェント」的なトピックで、僕もかつて在籍してたレバテックの名前が上げられてて、うれしい限りでした(^ω^)

ということで、エンジニア採用困ったときはぜひレバテックをどうぞ〜!

(なぜか古巣の宣伝をして終わるというwアフィリンクではないので、安心してクリックしださいmm)

最後まで読んでいただきありがとうございます。頂いたお布施は、嫁と子どもにおいしいものを食べさせてあげるか、僕がアフロにするための資金にさせていただきます。