フェスと想像力
見出し画像

フェスと想像力

フジロック、GLOBAL ARK、NAMIMONOGARARI

ここ数週間、フェスの話題が絶えない。そして、内容は基本的に良くない意味での話題だ。

イベントやエンタメ業界の端くれとして、当然気になるし、仕事をしていても頭の片隅から離れない。

それぞれのイベントが何故話題になっているかの詳細は、嫌というほどニュースになっているので、ここには書かない。散々見ていることを前提に、僕個人としての思いを書く。


1イベントの話ではなくなった。

フジロックについて、配信は見たけど、現地には行かなかった。

今の感染状況に対し、大規模でのリアル開催は、どこまで対策しても社会全体から両手をあげてポジティブに受け止められることはない。フジロックは批判覚悟の上での開催だろう。

一方で、アーティストのパフォーマンスは素晴らしかったし、フジロックが中止になっていれば、この数々の素晴らしいステージがこの世に存在しなかったかもしれないと思うと、複雑な気持ちだった。

「感染対策は万全にやった」「マナーもよかった」という人。

「県超えしている」「そもそも開催時点でアウト」という人。

「無観客でやれ」という人、「そんなの無理だ」という人。

どの主張も、それぞれの立場として間違ってはいない。

数ヶ月単位で感染状況も変わり、実質的なアウトとセーフのラインが書き換わる今、「世の中全員が絶対に正しい」ということは存在しない。

そんなことはない!と思う人もいるかもしれないが、それだったら、こんなに賛否両論にもならないし、目くじらをたてるようなことも起こらない。具体的な法整備がされている訳でもなく、要請というお願いベースの中、価値観も判断基準も右往左往しているのが「現実」だ。

とはいえ、フジロックは大きな出来事ではあったが、今思えば、まだ1イベントとしての話がほとんどだった。

その次の週に、GLOBAL ARKとNAMIMONOGATARIという野外イベントが、立て続けに悪い意味で話題になった。

ジャンルが違うと知らない人もいると思うが、両方とも、出演者はそれぞれのシーンを代表するアーティストだ。

そして、それぞれのイベントで、何が問題になったのかはニュースを見て欲しい。嫌という程、出てくる。

そして、今回書こうと思った背景に、今や個別のイベントの話ではなく、「フェス」や「DJ」や「HIP HOP」といった大きなカテゴリーの話になってきているからだ。

皆どれだけ感じてるかわからないが、「密フェス」は最悪の言葉だ。感染拡大とフェスの印象を紐づける、これ以上ないキャッチーなワード。世の中に広まるのは、残念ながら「三密」「不要不急」のように、非常に短く印象に残る言葉だ。ワードが一人歩きし、田舎の両親にまで印象を宣伝して回る。残念ながら、関係者がつらつらと書いた長文より、「密フェス」という言葉が広がる範囲は広い。

そして、信用や体力のある大手より、特に全国の中小のフェスやイベントとその関係者に、行政や会場、スポンサー、開催可否といった面で、ダイレクトに影響していくと思う。

おそらく、これを読んでいる人全員が自覚した方がいいのは「他所のイベントの話」ではないし、「対岸の火事」ではないし、「明日は我が身」ということだ。


フェスと想像力

それぞれのイベントが問題になった内容について、なんでそんなことをしてしまったのかと憤るが、想像するに、確固たる悪意というより、イベント主催者の力量、そして、想像力の不足だと思っている。

「批判は多少くると思っていた。しかし、まさかこれほどの大ごとになるとは思っていなかった。」正直、そんなところじゃないかと思う。

だからといって、やったことは擁護されるべきとは思わない。それとこれとは別の話だ。一方で、なぜそんなことが起こったのか、原因や背景を考えるのは、今後を考える上では大事だと思う。

あえてキツイ言い方をすれば、イベントというのは多少お金を積めば誰でもできる。会場を借りて、アーティストを呼んで、チケットを売ればいい。ただ、本当にいいイベントをつくるのは、とても難しい。

イベントはとにかく多くの人を巻き込む。スタッフ、会場、近隣、出演者、スポンサー、参加者、参加者の周りの人、シーンやカテゴリー、そして今は会場外にいる人の健康や命にも関わるかもしれない。

みんながハッピーになるにはどうすればいいのか。何ができるのか。何を伝えるべきなのか。やるべきか、否か。その結果がどうなるのか。本当にいいイベントをつくるには、考え抜く想像力が必要だ。

そんな想像力を持って、中止や延期という苦渋の決断をしたフェスは多い。また、同じく想像し尽くした上で、フジロックは批判覚悟で開催しただろうとも思う。残りの2つのフェスの関しては、どこまで想像できていたのかはわからないが、対応を見る限りは想像をはるかに超えた結果になってしまったのだろうと思う。

これからフェスやイベントをやる人は、とにかく想像力が問われる。

失礼だが、フジロックはまだしも、GLOBAL ARKやNAMIMONOGATARIの規模のイベントが全国のワイドショーやトレンドになることは今まではなかった。だけど、今はそういう時代なんだ。個々の行動がそれくらいの影響を持っているし、注目もされているんだということを自覚しないといけない。

また、主催以外にも想像力が問われているように思う。

イベントに直接関わるスタッフや出演者は、そのイベントに関わった時にどういう結果になるのか。自分や自分の業界だけでなく、もっと視野を広げて考えなくてはいけない。

参加者は、どのイベントに行くべきか、今行くべきか、行く場合にどんな行動をとるべきか、また、場合によっては、批判がくること、そして、実質的なリスクを持っていることも自覚的でないといけない。

そして、批判の石を投げる人にも、ぜひ想像力を持って欲しい。

自分のジャンルやイベントを擁護する為に、他所のイベントを批判するのは辞めた方がいい。「別物だ」といくら言っても、前述の「密フェス」のように、世の中は大きな動きとして捉えている。

五輪を批判したアーティストがフジロックに出てダブスタとかブーメランとか言われていたが、五輪は「国家レベルのスポーツイベント」で、自分たちが出るのは「民間の音楽イベント」だから別物と認識していただろう。こういうのは、起こってからなら誰でもわかるし、言える。大事なことは起こる前の未来を想像できるかだ。今、自分が投げている石の数々が、半年後にブーメランとなって自分の額に当たらないと本当に断言できるのか。

フェスはイベントであり、エンタメであり、娯楽だ。今は「フェス」というくくりかもしれなが、これがどこまで広がるかはわからない。そして、そこで動いたお金は世の中を周り、確実にあなたが関わる業界にもつながっている。

批判するなとは言うつもりはない。批判すべき場面も多々ある。ただ、「そんなことになるとは思ってなかった…」なんて、後悔してもしきれないような結果にだけはならないように注意した方がいい。

もう一度言うが、「他所のイベントの話」ではないし、「対岸の火事」ではないし、「明日は我が身」なんだ。


そして、わかると思うが、誰かが謝罪したら一見落着なんてことはない。

これから、個々人が考え、発信し、行動していく中で、徐々によくしていくしかない。

自粛生活が長く、お金もないし、楽しいこともない。イライラが募る日々の中だけど、度々立ち止まって、想像力を持って、後悔のない行動をして欲しい。そして、そんな人が一人でも増えて欲しいと思う。


アフロマンス


この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?
気軽にクリエイターの支援と、記事のオススメができます!
アイデアと実現力で新しい体験をつくる体験クリエイター、DJ、Afro&Co.代表。泡パ、サクラチルバー、喰種レストランなどの体験型イベントを数多く手がける。コロナ禍でも「#楽しいが必要だ」を掲げ、ドライブインフェス、RPGレストラン、VANLIFE DJなどの企画を次々と実現。