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【第3回】今日、何ひろう?~新しい知覚のフレーム~ アフォーダンスとは?

第一章 世界の拾い方

第一節 世界の切り分け方(見えているもの・感じるもの)


1.アフォーダンス

序章では、環世界がどのようなものか話しました。
第一章からは、私たちの世界の捉え方をより詳しく紐解き、そこから生まれる人間の行動・運動にも触れていきたいと思います。

「アフォーダンス」という概念を生み出した、アメリカの心理学者ジェームズ・ギブソンによると、知覚世界は3つの要素から成り立っているそうです。

〇媒質 medium

小学生は夏でも冬でも風を切るように町中を走り抜け、社会人は重要な会議前の社会人は深呼吸をします。このような移動や呼吸を可能にしているものが空気であり、世界を構成する要素の1つ、「媒質(medium)」です。当たり前すぎて「急に何?」という話ですが、たしかに空気がなければ私たちは生きることすらできないですよね。

キッチンから漂う匂いで今日の夕食がカレーだと分かるように、空気は、その中のどこかで何かが起きたとき、それを変化として周囲に伝えることができるのです。また、朝太陽の光で目が覚めるのも、「何も遮断しない」という空気の性質によって起きる現象です。

さらに、海や川で生きる魚たちにとっては、水が「媒質(medium)」となり、移動や呼吸をすることができます。

このように、「媒質(medium)」は透明で、光を通し、匂いを広げ、振動を伝播し、さらにその柔らかさゆえに私たちに移動すること、呼吸をすること、地面に対して一定の姿勢をとり続けることを与えてくれる、知覚世界を構成する要素の一つなのです。

〇物質 substance

世界を構成する要素の2つ目は「物質(substance)」です。

周囲を見渡すと、私たちの世界は非常に複層的で、木や石ころ、草花のような天然物から、携帯やテレビ、商業施設や犬小屋のような人工物まで、大きさも素材もバラバラなもので溢れかえっています。それらは、硬さ、密度、粘性、弾性、凝集性、光の吸収のしやすさなどが異なっており、それゆえに物質は数え切れないほど多くのアフォーダンスを私たちに与えています。

例えば、地面は移動基盤として、私たちに立つこと、進むことを提供しています。さらに、木は上ること、避けることなどの行動を私たちに与えます。

〇面 surface

そして、3つ目は「面(surface)」です。

物質と媒質の間には面があります。面とは、物質が媒質に露出しているところです。媒質と物質は私たちに「行動」を提供しているのに対し、面は私たちに「行動選択肢の豊かさ」を提供します。

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2つの異なる地面の写真

上記の写真から、私たちは左の地面は芝生で、右の地面はぬかるんでいるという情報を得ており、ぬかるんだ地面を移動するときのほうが慎重にゆっくりと歩きます。

同じ地面にも関わらず、異なる行動を私たちに提供する理由は、面には肌理(テクスチャ―)があるからなのです。肌理(テクスチャ―)を見た私たちは、そこにある情報を読み取り、ゆっくり歩くか、普通に歩くか決めることができます。

「媒質(medium)」や「物質(substance)」は私たちに行動を与える一方、「面(surface)」はその行動をどう行うかという選択肢を与えてくれるのです。

〇世界を作る3要素

このように、私たちの世界は行動をアフォードする媒質、物質と、行動の選択肢をアフォードする面という3要素の中で生きている(生きることを提供されている)のです。



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