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【第2回】今日、何ひろう?~新しい知覚のフレーム~ コラム:川遊び

序章 あなたの環世界

コラム:川遊び

〇自然の中で

21年8月の後半、私は高知県の奈半利川にいました。馬路村の役所からほど近い畔で、緑緑しい山々に囲まれた中、美しい水が太陽の光を綺麗に映しています。思わずその美しさに魅了され、子供のころの記憶を思い出し、また友達の誘いを受け、川遊びを始めました。
さて、川遊びをするときには、普段歩く地面とは全く別の「環世界」を駆使しなければなりません。私は、まず目視で目の前に広がる川の流れと、川底にある石のうち自らの身体が乗っても崩れなさそうな大きな石の群を探しています。それは、川遊びをしようと思ったその瞬間に無意識に行っています。
2・3歩程度の道筋が見えた段階で改めて1歩目の石をのぞきます。なるほどすこし滑りやすそうで、形もすこし思っていたほど平たんではないが、大丈夫かな?いや、この程度なら大丈夫だろう、そう判断しながら、1歩1歩あゆみ始めます。踏みしめた瞬間、足先で感じる水の冷たさに、全身でぞくっとしながら、その川の押し寄せてくる感覚をかみしめます。とはいっても数十秒でその一か所の冷たいという感覚は全身に撹拌し、水の環世界に順応します。そう、水の環世界とは、これまでのように遠くにわたる平面の連続から、水という変化を伴う地面と、その川底にあるこれまた変化をする石の連続に切り替わり、人間が使う器官も大きく変わってくるのであります。

〇失敗の連続

新しい環世界は、自らのピックアップすべき情報の精度が十分ではないため、多くの失敗を伴います。3歩目はある程度のリズムが必要のため、そのステップにおいて石の詳しいサーフェイスをチェックすることなく踏んだ結果、人間にとって意外と滑りやすい性質であったため見事にこけてしまった。こけた後が大変です。それほど周囲に大きな石がなかったため、次のステップは小さい石の集合体で足にとっては相当な痛みを伴いました。
さまざまな試行錯誤を繰り返しながら10分~15分も川の環世界で遊んでいると、動くために十分な特質を理解し、楽しめるようになるのです。ある程度の足の痛みに慣れながら、新しい世界に感動を感じることができます。空を見ると、見たことのない視点が広がります。山々の重なり合いとその先に見える大きな入道雲、ああ美しい。

〇都市の不足感、自然の充足感

多くの充足感を感じるこれはなんなんだろうか。私が知らなかった多くのことを自然から受容するこの感覚がありました。都市というものは、基本的に地面があり階段がありエスカレーターがありエレベーターがあり移動手段があり、我々にとっては既知の地面に慣れっこになっています。様々な環世界の中で、それとはちがったものを見せてくれる感覚はとても豊かです。どこにも安定がない川の流れ、そこと戯れながら自然の美しさを享受する。新しいピックアップを余儀なくされる環境に、どっぷりつかってみるのもよいかもしれません。

ただ、川遊びしただけなのですが、アフォーダンスという観点で川を見てみると、なにかすこし豊かな気持ちになれます。

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