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【第1回】今日、何ひろう?~新しい知覚のフレーム~ あなたの環世界

序章 あなたの環世界

1.はじめに

ペン回しを繰り返すのはどうしてだろう、iPhoneのスワイプはなんで心地よいのだろう…。このような人間の「体感」について調べる仕事をした際に、アフォーダンスという考え方に出会いました。
アフォーダンスとは、「環境がそこに生活する動物に対してアフォード(提供)する価値や意味のこと」という意味で、よく分からない説明です。実際、アフォーダンスの概念を完全に理解するのは非常に難しいことだと思います。
しかし、私はこのアフォーダンスについて学ぶにつれて、俯瞰した世界の見方、新しい視点を得た気がします。そこで、アフォーダンスを読み解き、新しい世界の見方を知る場として、この連載を開始します。

2.あなたの環世界

アフォーダンスの先駆けに、環世界について書きます。環世界とは、ドイツの生物学者であり哲学者でもあるユクスキュル(1864年〜1944年)が唱えた考え方で、すべての生物は自分自身が持つ知覚によってのみ世界を理解しているので、すべての生物にとって世界は客観的な環境ではなく、生物各々が主体的に構築する独自の世界である、というものです。

どういう意味か、ミツバチの例から考えてみることにします。

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右と左のイラストは、同じ場所、同じ視点からの風景です。
左のイラストは私たち人間が見ている世界で、右はミツバチの見ている世界です。ミツバチの知覚では、茎は認知されておらず、また、花の形もだいぶ簡素化して捉えられています。このように世界が捉えられる理由は、ミツバチにとって必要な情報は花の蜜だからです。

このように、環世界とは、生物が世界のすべてを認知しているのではなく、各々の知覚に基づいた独自の世界を持っているということを意味します。
たしかに、人間は多くの情報を視覚に依存している一方で、ウサギは主に聴覚で、犬は主に嗅覚で世界を捉えていますよね。

この環世界の考え方で重要なのは、「必要な情報」を中心に世界を構築しているという点だと思います。
ミツバチの例に戻りましょう。ミツバチの環世界が人間の環世界よりシンプルなのは、ミツバチの視覚が人より劣っているからだけではありません。人間よりシンプルな世界で十分だからです。先に述べたように、ミツバチは、蜜を求めて行動しているため、蜜のない茎や、枯れた花は知覚する必要がないのです。

ミツバチの環世界のように、私たちの世界もよりシンプルに捉えることはできないでしょうか。ミツバチが生きるために必要な花の蜜を基準に世界を構築するように、私たちも生きるために必要な要素だけを切り取った世界を見ることはできないでしょうか。

人間と他の生物の環世界が異なるように、人間1人1人の環世界も異なると思います。その中で、自分の環世界を構成する最もコアな要素を考えることで、日常の些細な悩みは消えるのではないでしょうか。


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